周知の通り、この1年で多くの労働者が働き方を大きく変えた。しかし、多くの調査がコロナ禍における従業員体験に焦点を当てている一方で、リーダーシップチームもまた、速やかに新しい働き方を取り入れて大きく変わっている。特に、最高情報責任者(CIO)の働き方は多く変化した。これからのCIOに求められる個性の中でも特に重要だと考えられるのは、「感情的知性」(emotional intelligence)と「共感力」だ。
調査会社Gartnerのアナリストが発表した新しいレポートは、今回の世界的な健康危機によって、リーダーのソフトスキルの重要性が高まっていることを明らかにした。またそれらのスキルは、今後地位が高いCIOの求人広告で、重要な条件として扱われるようになる可能性が高い。例えばGartnerの分析によれば、2020年に新しく雇用されたCIOに求められていた能力の中で、「感受性」の需要が前年比で92%増加していたという。
Gartnerは感受性について、他者の困難に共感し、それにふさわしい行動を取る資質だと定義している。レポートでは、一般論として、「感情面での対応の巧みさ」(emotional dexterity)を発揮することがCIOの仕事の重要な部分になりつつあると述べている。
このレポートを手掛けたGartnerのシニアリサーチディレクターRob O'Donohue氏は、米ZDNetの取材に対して、「私たちは、感情的知性を自己認識、自己管理、人間関係管理を行う能力だと定義している」と述べている。「感情面での対応が巧みであれば、次のレベルに行ける。それは、ソフトスキルや感情の観点から困難な課題に適応し、順応していく能力を持っているということだ」
これまでCIOの仕事では、感情面でのスキルよりも技術的なスキルが重視される傾向があったとO'Donohue氏は言う。しかし、コロナ禍によって世界が一変し、組織全体を一夜にしてリモートワークに切り替えざるを得なくなった経験を経て、事業継続のために賢明に働いたITチームがスポットライトを浴びるようになった。「これによってCIOは、実践的で開放的な方針を維持し、自分が他人の意見に耳を傾けるリーダーであることを示さざるを得ない立場に置かれた」とO'Donohue氏は述べている。
このような場面では感情面でのスキルが役に立つ。従業員を支えるという側面だけでなく、まず個人的な観点から危機管理を行う側面でも有用だ。危機の現場にいるCIOを対象としてO'Donohue氏が実施した調査によれば、過去1年間のパフォーマンス指標に対する自己評価が平均以上だったCIOは、危機を乗り越える上で自己研鑽や自己管理に日常的に取り組んでいたことが役立ったと回答する傾向が強かった。
また、パフォーマンスの善し悪しは、従業員とのやりとりにソフトスキルを利用しているかどうかと直接的に結びついていた。パフォーマンスが高かったCIOは、部下と1対1で行うミーティングで、4分の3の時間を指示するためではなく、話を聞くために使っていると述べていた。また、それらのCIOは、コーチングやメンタリングを通じて他人の育成に関わる傾向が強かった。
「パフォーマンスが平均以上のCIOは、『サーバントリーダー』のマインドセットを持つ傾向が強い」とO'Donohue氏は述べている。「そうしたリーダーは、チームに奉仕し、コーチングやメンタリング、チームの育成を重視する。そのことがリーダーの周囲に、チーム内や他の役員との間で好循環を生み出し、大きなプラスの効果を生み出す」