IDC Japanは4月8日、「2021年 国内IoTエッジインフラストラクチャ調査:インテリジェントエッジ利用状況」を発表した。このレポートは、同社が1月に実施した調査を基に作成された。同調査は、IoTのプロジェクトを推進している国内企業/団体の経営層、事業部門長、部課長、係長、主任クラスを対象に行い、476の組織から回答を得た。
同調査では、IoTインフラのユーザーにおけるIoTエッジインフラの利用形態とベンダーの選定基準について調査した。IDCはIoTの基本構造として、「IoTエンドポイント層」「エッジコンピューティング層」「クラウド、またはデータセンター層」で構成される「IoTの3層モデル」を定義している(図1)。
IoTの3層モデルを基に「IoTコアインフラ」「IoTエッジインフラ」を定義し、IoTエッジインフラを「インテリジェントエッジ」「それ以外のIoTエッジインフラ」に分類している。インテリジェントエッジは、データ分析などの高度なコンピュート処理を可能にするもの、それ以外のIoTエッジインフラは、IoTゲートウェイやルーターなど、データ分析を行わないものを指している。
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同調査では、IoTエッジインフラにおける最も重要な処理として、現在は回答者の37.2%が「データ分析処理」を選択しており、3年後にデータ分析処理を選択する割合は6.5ポイント増加し、回答者の4割以上になる(図2)。一方、「OT(制御システム)の監視/制御」を選択する割合は、現在の33%から10.7ポイント減少し、回答者の約2割になる。「データ分析(AIを利用した深層学習)」は3年後に最上位項目となり、現在の最上位項目「OTの監視」に取って代わる。
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分析処理で使用するデータに関しては、3年後は「画像データ(動画)」が最上位項目になり、「画像データ(静止画)」「システムログ(稼働状況)」「位置データ」が続いた。データ分析処理をIoTエッジインフラで行う理由の上位3項目は「IoTコアとIoTエッジインフラの全体的なバランスを考慮した」「データ処理スピードが速い」「データ分析スピードが速い」で、「ハッキング対策のため」「データ漏えい防止のため」といったセキュリティに関する項目が続いた。
IoTエッジインフラにおけるデータ分析処理が増加し、インテリジェントエッジのニーズが拡大する中で、インテリジェントエッジにAI(人工知能)を搭載し、画像データなどをデータ分析に使用するケースが増えていく。このように、今後多様化するデータ分析に処理性能の面で対応するとともに、セキュリティに対する顧客の懸念を払拭することが必要になるとIDCは見ている。
最も重要な処理を行うIoTエッジインフラの採用意向に関する質問では、現在は回答者の半数近くが「汎用サーバー」を選択した。3年後の採用意向では汎用サーバーを選択する割合は減少し、「IoTエッジ専用製品」「クラウドサービスベンダーのIoTエッジサービス」を選択する割合が増加した。これらのIoTエッジインフラを選択する割合は、それぞれ3割前後となり、ほぼ均衡している。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャーの下河邊雅行氏は「IoTインフラベンダーは、インテリジェントエッジの製品ラインアップ強化といった製品戦略に加え、パブリッククラウドサービスベンダーとの競争戦略やアライアンス戦略を策定することが重要である」と述べる。