本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏と、日立製作所 執行役常務 産業・流通ビジネスユニットCEO(最高経営責任者)の森田和信氏の発言を紹介する。
「これからも安定的な高成長を図っていきたい」
(テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏)
テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏
テラスカイは先頃、2021年2月期決算と今後の事業戦略についてオンラインで記者説明会を開いた。佐藤氏の冒頭の発言はその会見で、今後の業績見通しについて語ったものである。「安定的な高成長」という二律背反とも受け取れる表現が印象に残ったので「明言」として紹介しておきたい。
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは安定的な高成長のポイントと、それを支えるIT人材の話が興味深かったので取り上げたい。
まず、安定的な高成長を遂げているのは、創業以来の連結売上高の推移を示した図1を見ると明らかだ。ここ5年の年平均成長率は28%と高い水準で、2022年2月期も131億円の予測で前期比18%増を見込んでいる。
図1:創業以来の連結売上高の推移(出典:テラスカイ)
こうした安定的な高成長の原動力になっているのは、好調なクラウドインテグレーション事業のベースとなっているSalesforce.comとAmazon Web Services(AWS)のクラウドサービスが、図2に示すように年平均成長率でそれぞれ29%および41%と、「既に巨大な売上規模になっているにもかかわらず、非常に高い成長率で事業を広げている」(佐藤氏)からだ。
図2:SalesforceとAWSの売上高の推移(出典:テラスカイ)
そうした中で、テラスカイは現在およそ1500社の顧客において4800件を超えるプロジェクトを手掛けているという。
佐藤氏は今後の重点投資領域として、IT人材の育成および確保を挙げた。経済産業省が「2030年には59万人のIT人材が不足する」と発信しているように、IT人材不足は深刻な問題となっている。さらに全業種にわたってデジタルトランスフォーメーション(DX)への需要が高まり、ITおよびDX人材はIT企業に限らず壮絶な争奪戦が繰り広げられている。
本サイトで2020年2月12日に掲載したトップインタビュー「テラスカイが見据える『クラウドインテグレーターの先』とは」でも、佐藤氏が「仕事はたくさんあるのに人材不足で対応できない状態だ」と強く訴えていたのが印象的だった。
そこで同社はこのほど、IT人材を育成して求める企業に派遣する事業を推進するサービス会社「テラスカイ・テクノロジーズ」を設立し、5月に業務を開始すると発表した。新会社はキャリアチェンジを検討する第二新卒、一時的にキャリアを中断/離職した社会人などIT未経験者をクラウドエンジニアに育成し、企業に即戦力として派遣することで、深刻化するIT人材不足の解消に貢献するのが使命だ。
「その最大の派遣先はテラスカイグループになる」(佐藤氏)と聞いて、なるほどと思ったが、「IT人材不足という社会課題をなんとかしたい」(同)という思いが伝わってくる取り組みである。この動き、今後も注視していきたい。