国のDX推進施策と企業の課題
1.DX銘柄とDX認定制度
国が企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に“お墨付き”を与える「DX銘柄」や「DX認定制度」といわれる仕組みがあります。
DX銘柄(関連リンク)は、経済産業省が2015年に発足させた「攻めのIT経営銘柄」を、2020年にDXに焦点を当てる形に改めたもので、「デジタル技術を前提として、ビジネスモデルなどを抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていくDXに取り組む企業」と定義されています。DX銘柄は、東京証券取引所の上場企業を対象に年次で選定され、これには「DX認定制度」への“申請”が必須となっています。DX認定制度(関連リンク)は、上場企業に限らず全ての事業者を対象に、国が策定した指針である「デジタルガバナンス・コード」(詳細は後述)を踏まえた取り組みを行う事業者を通年で選定し、DXを推進できる体制が整っている状態(DX Ready)になっていることを認定するものです。
最近では、DX税制(DX投資について税額控除が受けられる制度、関連PDF)の適用資格要件の1つとしてDX認定が指定されていることもあり、DX認定を早期に取得したい企業が一気に急増してきています。
経済産業省サイトより
2.DX銘柄が示す日本企業の課題
ここで筆者が着目しているのは、DX銘柄の目的です。ここでは、「IT利活用の重要性に関する経営者の意識変革を促す」ということ、また「投資家を含むステークホルダーへの紹介を通して評価を受ける枠組みを創設し、企業によるDXの更なる促進を図る」とされています。
これらは、DXに対する経営者の意識や、DXによる企業価値の向上といった点に重きが置かれ、一般的にDXの目的とされる労働生産性の向上といったものとは一線を画しています。これらDX銘柄の目的は、DXを推進する現場からよく発せられる課題認識と共通しており、これまで日本企業のDXが遅々として進まなかった要因をうまく言い当てている感があります。