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みんなの銀行・横田頭取に聞く、デジタルとデータによる顧客体験の創造

國谷武史 (編集部)

2021-10-14 06:00

 ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)のみんなの銀行は、国内で初めてパブリッククラウドに勘定系システムを構築し、5月28日に正式サービスを開始した。日本の銀行業界では極めて先進的な取り組みが注目を集める。デジタルとデータを駆使する新たな銀行ビジネスの展望などを代表取締役頭取の横田浩二氏に尋ねた。

スタート時のトラブルもクラウドだから乗り越えられた

 みんなの銀行は、10代後半~40代のデジタルネイティブあるいはデジタルへの親和性が高い世代を主要顧客に位置付け、モバイルアプリを中核にデジタルバンキングサービスを展開する。横田氏によれば、10月上旬(取材時点)での新規口座開設数は14万口座を超え、主要顧客が全体の約7割を占める。

みんなの銀行 代表取締役頭取の横田浩二氏
みんなの銀行 代表取締役頭取の横田浩二氏

 実店舗ではなくモバイルアプリでサービスを提供することで全国から利用者を獲得しており、ほぼ目標通りのスタートを切ることができたという。また、国際的なプロダクトデザイン賞の「Red Dot Design Awards」で2021年度のBrand of the yearを受賞。「まだ初歩のサービス提供ではあるものの、デビッドカードのご利用などお客さまからは総じて好評をいただいている。国内外でさまざまなアワードもいだたくなど、望外な出来事にも驚いている」と横田氏は話す。

 同行は、デジタルとデータをフルに活用した新しい銀行ビジネスの展開と多様なサービスの創出を通じた新しい顧客体験の実現を掲げる。そのための仕組みとして、銀行の心臓といえる勘定系システムを伝統的なオンプレミスのメインフレームではなく、パブリッククラウドのGoogle Cloud上にスクラッチで開発、構築した。

 昨今は、社会に多大な影響を与える銀行のシステム障害が話題になるが、みんなの銀行にとって、勘定系システムをパブリッククラウドに構築する国内初の取り組みは、大きなプレッシャーだったとのこと。現在までサービスに大きな影響を与えるようなトラブルは発生しておらず、安定稼働を実現できたことが1つの大きな経験だと述べる。

 しかし、サービス開始当初はユーザーからのアクセスが集中して、アプリからサービスにログインしづらい、手続きの処理が完了するまでに長い時間を要するといった事象が発生。5月28日のサービスイン当日の朝には、ユーザーのアプリに不具合が見つかるトラブルも起きたが、いずれも短時間で解決したとのこと。クラウドを利用していたから可能だったという。

 「アプリの不具合は、原因を特定してコンテナー環境で修正し、クラウドのステージング環境でテストを行い、2時間ほどで復旧することができた。もしメインフレームなら、終日あるいは数日間のサービス停止をせざるを得なかっただろう。アクセスやトランザクションの集中にもオートスケールの機能で自動的に対応している。やはりメインフレームであれば、バッチ処理を中断して夜間に回すなどの措置を講じることになっていただろう」

 パブリッククラウド上の勘定系システムは、構築はもとより運用についても国内に前例が無いだけに、こうした問題とその解決の経験は、同行にとって重要な資産になり始めているようだ。

 ユーザーが利用するモバイルアプリも、デジタル世代の感性や行動様式を踏まえた直感的でシンプルな操作性を持つユーザーインターフェースを実現している。機能やサービス内容が一目で分かるデザインも特徴的で、ユーザーからは「銀行アプリのような感じがしない」と良い意味でのフィードバックが多く寄せられているという。

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