ドリーム・アーツは5月24日、デジタルトランスフォーメーション(DX)浸透調査結果を発表した。1000人の従業員を対象にDXに対する積極性を確認する質問には6割が消極的。「面倒くさい」「大変そう」「自分にできるか不安」といった声が並ぶ。
ドリーム・アーツ 取締役 執行役員 CTO 石田健亮氏
同社 取締役 執行役員 最高技術責任者(CTO) 石田健亮氏は「DXへの取り組みは二極化している。われわれも肌感覚で冷ややかな目線を感じることも。(DXは)新しいことや変革に取り組むからこそ失敗もある。その失敗の中から成功を生み出すのだが、恐怖を感じている企業は、その一歩を踏み出せない」と指摘した。
DXの進捗が分からない非管理職
4回目となる今回は、従業員数1000人以上の大企業の従業員1000人を対象に4月の5日間、調査した。これまでの調査は役員や情報システム部門からの聞き取りが中心だったが、今回は入社3年未満の非管理職や中間管理職など、まんべんなく意見を集めている。
冒頭で述べたDXに対する消極性だが、内訳は「絶対に関わりたくない(14%)」「できれば関わりたくない(21%)」「いわれたら仕方がない(25%)」「少しは興味がある(28%)」「ぜひ関わりたい(12%)」。DXに対する否定的な理由トップ3は「面倒くさい(235ポイント)」「大変そう(210ポイント)」「自分にできるか不安(176ポイント)」
ドリーム・アーツ 社長室 コーポレートマーケティンググループ ゼネラルマネージャー 金井優子氏
同社 社長室 コーポレートマーケティンググループ ゼネラルマネージャー 金井優子氏は「1位と2位が厄介。心理的抵抗感を言語化している」と穴をうがち、今回の調査対象企業内で一種の“DX疲れ”が起きていることを予見させた。
企業内のDX進捗度だが、過去3回(2021年8月、同年10月、2022年1月実施)は前述のとおり調査対象が異なり、6~8割の進捗を見せたが、今回は23%。内訳は「DX取り組み中(23%)」「デジタル化のみ(27%)」「取り組んでいない(6%)」「わからない(44%)」。
不思議に思ったドリーム・アーツが追跡して調査したところ、「わからない」の5~6割を占めたのは非管理職だった。さらに「DX取り組み中」と回答した232人に進捗度を尋ねると、「成功を実感できるほどうまく進んでいる(15%)」「現在はロードマップどおり成功しそう(48%)」「現状はロードマップどおりだが失敗しそう(15%)」「うまくいっていない(20%)」「確実に失敗しそう(2%)」と回答している。
「われわれとしても衝撃的な結果。若年層はデジタルに明るいという印象があったものの、実態とギャップが生じている。要因は多岐にわたるが、原因を分析しないと(DX推進が)『笛吹けども踊らず』になりかねない」(石田氏)
個人が思い描くDXと企業が推進するDXは、乖離していないのかとの調査には、個人が考えるDXと企業が考えるDXの両方を説明できると回答した201人の87%が「一致」と回答。だが、残る13%が回答した意見欄には、企業はペーパーレス推進、自身は業務フローの抜本的な見直しと乖離しているケースが散在した。ここでもデジタル化(デジタライゼーション)とDXの混同が見て取れる。
前述の通り、DXへの関心度は4割にとどまり、6割が消極的だが、DXに対する積極性は個人と企業が描いたDX像が一致する場合、76%まで高まった(有効回答数174)。このようにDXの取り組みが二極化する理由は主に経営層にある。
今回の調査でDXを実現するために重要な項目は「経営トップのリード(395ポイント)」、DX推進の課題も「経営トップの問題(284ポイント)」といずれも経営層が題材に上った。経営層のDX理解度は67%にとどまり、「上辺だけの経営層」「本心がわからない経営者」「姿の見えない(ビジョンを示さない)経営者」などの意見が並ぶ。
※クリックすると拡大画像が見られます
他方でデジタル教育に注力する割合は24%(検討中:18%、いいえ:58%)。この結果に対して石田氏は、「デジタル思考は概念的・抽象的なもの。言語化も難しく本質的なコミュニケーションの課題につながっていく。大事なのは共通言語で語れること。全員がコードを書けるように教育するのではなく、抽象的な物事を仕組みで捉え、改善することを各レイヤーで実現しなければならない。弊社はこの点もお支えする」と支援体制を用意していると語った。