(編集部より:ITコンサルタントである筆者の宮本認さんは、ここまで情報システム部長との会話からIT戦略がどうあるべきなのかを議論してきました。ここからはIT戦略の立て方を分かりやすく解説します)
ここまで「クラウドって何?」という問いに端を発し、IT戦略を立てる必要性を部長と議論してきた。その中には、「今の日本のIT部門は企業に例えると倒産しかかっている」とか「一人が多くの役割をこなさねばならない状況にあるのにマネジメントが気づいていない」とか「現代のITの複雑性をマネージできるような組織になっていない」といった厳しいことを指摘してきた。
仕事柄、実際に多くの情報システム部長と議論することが多いが、ほとんどの企業において、「資金は経営からは出てこない」が「成果は今以上に求められる」状況に立たされている。しかし「それをやるための人材が育っていない」のが現状だ。
情報システム部長は苦境に立たされている。言うなれば、情報システム部長は弱者だと思う。アメリカ軍の戦略を部長との会話の中で用いておいて、こう言うのも気が引けるが、「戦略とは弱者こそが持つべき」ものである。
だから、順風満帆に動いているIT部門はさておき、「何か変だ」と感じている、すべてのIT部門は戦略を立てる、計画を立てるということを考えてほしい。
タイミングは“今”だ。後送りすることで良いことは何一つなく、原則的に現在の日本において状況が好転することはない。環境要因が良くなることはないのだから、勝手に良くなってくれることもない。
立てておいた方がいい戦略は、次の通りだ。
自分たちのITの哲学である。哲学というとわかりづらいが、
―リスクを取って、先進技術を積極的に活用し、他社にはないリターンを狙うのか
―リスクを取らず、標準的技術を使い、ほどほどのリターンを狙うのか
―メリハリをつけて、リスクを取るところと取らないところを使い分けるのか
―黙って静観するのか
姿勢をはっきりさせる。できれば、投資対効果の姿勢が描かれているといい。「売上対比○%の投資を使い、△に重点投資をして、αとβでの貢献を目指す」というようなことが整理されていると素晴らしい。
業務、技術をどのレベルまで引き上げるか。できれば目標とする他社を決めてほしい。その中でどの業務、どの技術に重点を置き、どの業務、どの技術は静観するかを定める。可能であれば、経営や事業の成長の意図と自分たちのリソースの制約を考慮することが望ましい。
事業、業務にどこまで共通・標準を適用していくか、という戦略だ。単一事業の場合には「統合基幹業務システム(ERP)をどこまで使うか?」という議論に置き換わるかもしれない。多角化している事業の場合には、一緒にするもの、個別で構わないもの、その考え方を整理してもらうことだ。そうして、2のIT化方針とセットにすると、どの業務・事業には潤沢に投資を行って業務のレベルを上げていくか、を整理しておくことが望ましい。
アーキテクチャであり工法だ。アプリケーションであれば「サービス指向アーキテクチャ(SOA)的な工法で挑むアプリケーションはどれか?」を定めることであり、インフラストラクチャであれば「どこまで仮想化したサーバを適用させるか?」を決めることだ。当然「デスクトップは一種類なのか、タブレットに置き換えるのか?」ということも定めていく必要がある。特に資金の潤沢さの度合いに最も左右されるところだ。潤沢に予算がある場合には、良い構造にしておくべきだし、そうではない場合は切り詰めることを考えるところである。
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