クラウド導入進むが「検討したが利用しない」企業も増加

田中好伸 (編集部)

2012-07-24 15:23

 IDC Japanは7月24日、クラウドに対するユーザー動向の調査結果を発表した。国内企業のクラウドへの認知度、利用と導入の割合は2011年と比較して堅調に増加しているという。

 クラウドを理解している企業でのクラウドの利用と導入の割合はSaaSで26.3%、パブリッククラウドで19.1%、業界特化型で8.2%、プライベートクラウドで17.2%という結果になっている。2011年の調査と比較すると、堅調に増加している。

 一方で「検討したが利用しない」と回答する割合が2011年と比較して大幅に増加している。東日本大震災の影響で注目を集めるクラウドを具体的に検討する企業が急増した。

 検討の結果、技術的あるいは管理的な課題から短期間ではクラウドの利用や導入ができないと判断する企業も多かったことも判明している。だが、企業が具体的にクラウドを検討したことは、クラウドの理解を促し、中長期的にはクラウドの普及を促進するとみている。

 企業のパブリッククラウドに対する期待はコスト削減であり、ベンダーの選定基準でもコストが重要視されている。これはパブリッククラウドが登場して以来、変化がないと説明。パブリッククラウドを提供するベンダーも急増している。

 だが、企業が具体的に検討、評価するベンダーやサービスの数は限られているという。パブリッククラウドを利用している企業が具体的に評価したベンダーの数は3社以内とする回答が9割弱となっている。ベンダーにとっては、認知度を向上させ、検討や評価の対象となるリストに名を連ねる施策が喫緊の課題になっていると分析している。

 国内のクラウド市場は2010年に“認知度の普及”から“ベンダー間の差別化”と課題が変わったと説明。2011年にPaaSとIaaSでは同様の変化が見られたと指摘する。このことから2012年には、プライベートクラウドが“プライベートクラウドの啓発と、ベンダー認知度の普及”から“差別化”に変化するだろうとみている。

 だが、SaaS/PaaS/IaaSのパブリッククラウドと比較すると、プライベートクラウドの導入方法はさまざまであり、複雑だ。プライベートクラウドの導入に適したハードウェアとソフトウェアのパッケージ化された製品も発展しており、導入するパートナー企業に対する期待も変化していると分析する。

 こうしたことからIDC Japanの松本聡氏(ITサービスリサーチマネージャー)は「変化の激しいクラウド市場で顧客視点でクラウドを提案し、自らの特徴を明確に示すことがベンダーの差別化につながる」と提唱。その上で「確固たる地位を築かなかったベンダーは近い将来、淘汰の波が訪れる」と警告している。

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