IDC Japanは7月26日、5月に実施したユーザー動向調査「国内クラウド市場調査2011年」の結果を発表した。
調査によると、パブリッククラウドを「良く理解している」「概ね理解している」企業は約4割。「なんとなく分かる」を加えた、つまりパブリッククラウドを認知する企業での利用率は、SaaSが23.6%、PaaS/IaaSが13.8%となった。IDCは2010年に実施した同様な調査結果と比較すると、1年間で大幅に認知度と利用率が上昇したと説明している。
テレビや新聞などのマスメディア、経済誌を含めた一般媒体でクラウドが取り上げられ、IT関連の媒体ではクラウドの優位性や課題、導入事例などについて、詳しい内容が数多く紹介されている。クラウドに関わる情報が量、質ともに充実したことが、国内企業の認知度と理解度の向上を促進したとみている。

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一方、国内企業のパブリッククラウドに対する印象は、セキュリティに対する懸念を除いて、肯定的な意見が多くなっている。なかでも、コストや迅速性、拡張性に対する評価が向上。これらの項目は、クラウド事業者が利点として訴求している内容であり、企業がその優位性を評価していることも分かるという。セキュリティに関しては、議論が続いているにもかかわらず、いまだセキュリティに対する懸念は解消されていない状況だ。
東日本大震災の影響から企業のクラウドに対する注目度も高まっているが現在、企業がクラウド、特にパブリッククラウドの導入に期待する効果はコスト削減であり、事業者とサービスが信頼できることを前提とした上で、機能や付加価値によってクラウド事業者やサービスを選定していると分析している。企業が重要視する機能や付加価値は、企業規模や業種、システム領域によって異なるともいう。
国内SaaS市場では、2010年に“認知度の普及”から“ベンダー間の差別化”へとベンダーの課題が変わった。同様に国内PaaS/IaaS市場でも、2011年に“普及”から“差別化”へと市場の課題は変化するとみている。この変化にあわせて、優位性の訴求という“漠然とした啓発”から“具体的な提案”へとベンダーの活動が変わるという。
IDC Japanの松本聡氏(ITサービスグループ リサーチマネージャー)は「具体的な提案では、なぜそれが実現可能であるのか、簡単かつ納得感のある説明がベンダーに求められる。また、パブリッククラウドでは低価格性は必須条件であり、可視化できる付加価値によって差別化を図る必要がある」とコメントしている。