ガートナーでは、企業戦略に基づき、リソースとプロセスを最適に配置するために、データを分析・活用することを、ビジネスインテリジェンス(BI)と呼んでいる。BIの考え方自体は決して目新しいものではなく、企業にとって、情報の有効活用は昔から最大の課題の1つであるが、近年のビジネスを取り巻く環境の複雑化や不確実性の増大、企業に求められる意思決定の高度化などにともない、企業経営における情報活用に対する注目度は高まっている。
また、多くの企業が既にある程度の業務をシステム化しており、膨大なデータが蓄積されているものと思われると同時に、インターネット技術の普及により、情報を共有するための物理的な仕組みも手に入れやすくなった。このような、ビジネス環境における課題とIT環境のポテンシャルが、近年のBIソリューションに対する注目の高まりを後押ししている。
BIに対する注目は高まっており、ビジネスオブジェクツやコグノス、SASなどのBIベンダーのみならず、データベースベンダーのオラクルやマイクロソフト、ビジネスアプリケーションベンダーであるSAPもBI関連の取り組みを強化しているが、実際どれほど日本企業に浸透しているのだろうか。
図は、ガートナー ジャパンで実施している、企業ユーザーITデマンド調査の結果より過去3年間のBIの利用状況についての変化を表したものである。2002年3月の調査では、BIツールを利用中とした企業が9.7%、BIを知らないとした企業が46.0%という状況であったが、2005年5月に実施した最新の調査によれば、BIツールを利用中とした企業が3年前に比べ約8%増加して17.8%に達しており、BIを知らないとした企業は15%弱減少し、31.8%となった。
BIを既に導入している企業が、20%弱であるということからすれば、BIは現時点では一部企業のものと考えるのが妥当であろう。しかし、BIを導入した企業比率の高まりと、「BIを知らない」という企業比率の低下という事実から、BIソリューション、あるいはBIという言葉自体は、ここ数年で日本の企業に緩やかにではあるが、それなりに浸透してきているということもまた事実である。
また、BIに興味を持っているものの、現時点では導入に踏み切っていない企業が、3年前から変わらず3割強存在しており、BIに対するユーザーの関心は衰えていない。さらに、BIが現時点では一部企業のものであり、「BIを知らない」という企業がいまだに3割以上存在しているということは、裏を返せば、BIソリューションを提供する各種ベンダーにとって、有力な将来の潜在顧客、すなわちさらなる市場の開拓余地がまだまだあると言うこともできる。