英国のある保険会社が2004年、GPS受信端末を使って自動車の走行距離を正確に追跡し、その距離に応じて毎月の保険料を決める「pay as you drive」方式の保険商品を試験的に提供し始めた。素晴らしいアイデアだと思う。車を1カ月間車庫に入れたままにしておけば、同じ期間に500マイル運転する人と同じ金額を請求されることはない。さらに良いことに、この装置は(ただ記録するだけでなく)情報を送信するので、車が盗まれたときには簡単に追跡して泥棒を捕まえることができる。
さて、いつものように、このニュースの意味を考えてみよう。
このシステムは、当初意図されていなかった面白い用途に使うことができる。用途の1つとして、警察(あるいはケンカ中の夫婦)が、相手の「行動記録」を簡単に調べられるというものがある。また、保険会社も、顧客の車がどこで時間を過ごすかに基づいて保険料を徴収することができる。例えば、犯罪が多発する地域に顧客の車が何時間もいる場合には、それに合わせて保険料も高くなる。もっと先進的な考え方をする会社だったら、顧客の運転の仕方についてデータを集め始めるかもしれない。どんなときに、どれくらいスピードを出すか、どれくらい頻繁に車線変更するか、急発進する癖があるか、急ブレーキを踏むことが多いかなど、(潜在的に)交通事故を引き起こす可能性の高い運転癖のデータを集めるのだ。
もっと高度な分析機能が開発されれば、ドライバーの運転能力の低下を探知することさえ可能になるかもしれない(例えば、保険料の通知を受け取り、その金額があまりにも高くてショックを受けている状況とか)。しかし、一番興味深くて人の命を救う可能性があるのは、保険会社のサーバにオートダイヤラー(電話自動発信装置)を接続して、顧客にどんどん電話をかけることだ。そして、機械で合成された、低音で威厳のある声で、スピード違反をしたり、無謀運転をしたりしている顧客をいさめるのだ(こういう電話が運転の邪魔になって事故が起きたら、それこそ皮肉なことではあるが・・・)。