IAサーバならデルに聞け--デルのエンタープライズ戦略

藤本京子(編集部)

2006-02-23 12:48

 デルのエンタープライズ事業が好調だ。同社は米国時間2月16日に2005年度第4四半期(2005年11月〜2006年1月)の決算を発表、ストレージやサーバ、サービス、ソフトウェアなどを含めたエンタープライズ事業において、前年同期比21%増を達成したとしている。

 デルでは、今後もエンタープライズ事業の強化に注力し、「2009年にはデスクトップ分野以外の売上を全体の65%にする」との目標値を掲げている。デル日本法人にてデル・プロフェッショナル・サービス事業部 兼 アドバンスト・システムズ・グループ 技術本部長を務める諸原裕二氏に、同事業の方向性について聞いた。

--エンタープライズ事業が好調なようですが、デルのエンタープライズ事業の現状と戦略について教えてください。

 デルでは、ベンダー独自のものではなく、標準技術に特化した製品を推進しています。つまり、IAサーバやDell|EMCブランドのストレージといったハードウェアをベースに、インフラのソリューションを提供するというスタイルです。製品と共に、「デル・プロフェッショナル・サービス」(DPS)というコンサルティングサービスを提供することで、システムの提案から導入、運用までをトータルに支援しています。

--エンタープライズサービス部門は、2005年度第3四半期(2005年8月〜2005年10月)の決算でもアジア地域で前年同期比71%増となるなど、伸び率が大きいですね。米DellのCEO、Kevin Rollins氏が2005年10月に来日した際には、同部門の成長はDPSが大きく貢献しているとのことでした。

「日本のDPSではUnixからのIAサーバへの移行が多い」と話す、デル DPS事業部 技術本部長の諸原裕二氏

 DPSに関しては、前年度の倍の成長率です。もともとデルの事業はハードウェア販売が中心でした。つまり、そのハードウェアをベースとして、ミドルウェアなどを構築する機会はあったのですが、そこに着手していなかった。この分野のマーケットは、ハードウェアビジネスそのものの4倍から5倍にもなります。2000年にDPSをスタートさせ、新市場を開拓したことでビジネスチャンスが広がりました。

 ソリューションを含めたハードウェアの提案ができるよう、体制を整えつつ事業を進めてきましたが、ここ約2年はDPS事業をより強化する方向に動いています。売上規模に応じて担当者も増え、日本では去年の倍になりました。

--アメリカのDPSと日本のDPSを比較した場合、何か違うことはありますか。

 アメリカでもDPSという名称で同様のサービスを展開していますが、アメリカのDPSは、2002年に技術コンサルティングサービスを提供するPluralという企業を買収し、Pluralの事業を中心としてDPSを進めたので、もともとPluralが強かったマイクロソフト系の開発関連を得意分野としています。

 日本では、マイクロソフト系はもちろんですが、オラクルやSAPなどのアプリケーションにおけるUnixからのIAサーバへのマイグレーションにフォーカスしています。システムのアップグレード時にUnixからIAサーバへの移行を考える顧客が増えていますしね。スケールアップの世界からスケールアウトへの移行が進んでいるといえます。すべてのシステムをIAサーバで構築できるわけではありませんが、チップの性能が上がるにつれ、IAでカバーできる範囲も広くなっていますから、デルとして提案できることも多様化しています。今後もIAサーバの市場は拡大する一方でしょうね。

--DPSを推進する上での課題はありますか。

 まだ認知度が低いことが課題だと思っています。インフラ構築は、単に広告を出せばいいわけではありません。地道な努力で実績を作り、顧客の同意を得た上で事例として外に出すことで、信頼度も認知度も上がると思っています。やはり、構築したシステムが実際に動いていると証明することが大切ですから。

--ところで、IAサーバにフォーカスしているということですが、Itaniumサーバの取り扱いは2005年秋に中止しましたね。中止に至った理由は何なのでしょう。

 マーケットがあまり大きくないことがひとつの理由です。今後の成長性を考えると、Itaniumベースの製品を出すよりも、Xeonベースの製品を中心に、デュアルコアやマルチコア製品にフォーカスした方が顧客のためになるだろうと考えたためです。

 HPCの分野ではItaniumも残っていくと思いますが、ビジネスユースで考えると、Itaniumではコストパフォーマンスを提供できません。対応アプリケーションもまだ充実しているとは言えませんしね。顧客が必要としているのは、チップそのものではなく、動くシステムなのです。

 Itaniumに限った話ではありませんが、ベンダー独自のアーキテクチャが入ってくると、顧客はその技術に縛られることになります。それはコスト高にもつながり、デルの戦略にマッチしません。デルとしては、真にオープン化された、顧客自身でも把握できるシステムを作りたいのです。

--デルでは、AMD製品は採用していませんよね。デルがAMDを採用するのではないか、という噂は何度もささやかれていますが、実際どうなのでしょう。ご自身はAMDのOpteronについてどうお考えですか。

 Opteronがパフォーマンスで優位に立っているデータがあることは知っていますし、HPC分野では利用価値のある製品だと思います。ただ、先ほども言ったように、ビジネスを動かすのはチップだけではありません。サービスやサポートなども含めた対応を考えなくてはならないのです。実際、ビジネスユースにおいてOpteronと競合するケースはあまりありません。現時点で特に必要性を感じていないので、採用に至っていないまでです。

 ただ、AMD製品を採用しないと決めているわけではありません。インテル製品を唯一の選択肢としているのではなく、顧客ニーズに応じてさまざまなベンダーの製品を採用する可能性はあります。このスタンスは変わりません。現状ではインテル製品で顧客ニーズに十分対応できているため、新たな製品の採用に至っていないまでです。

--2005年10月に、CEOのRollins氏は「2009年にデスクトップ分野以外での売上を全体の65%にする」という目標値を示していました。これは達成できそうでしょうか。また、達成のためにどういった取り組みをするのでしょう。

 かなり先の話なので、現時点で達成できるかどうかについては何とも言えませんが、順調であることは間違いありません。今後、よりミッションクリティカルに近い用途でデル製品を利用してもらえるよう顧客を支援することで、確実にマーケットシェアを確保したいと思います。

 2005年2月には、サーバやストレージのサポート体制を万全にするための施設「エンタープライズ コマンド センター」を開設しました。ここでは、問題が発生した際、解決までの時間短縮につながるよう、サポートの流れを一元管理しています。

 また、2001年8月に設置した製品の動作検証施設「デル・テクノロジー・ソリューション・センター」(DTSC)も、2005年11月には検証環境スペースを2.5倍に拡張しました。ラックの本数も約2.5倍になったほか、ソリューションごとのエリアも新設しています。システムは高価な買い物です。提案書を見せるだけでなく、やはり実際のシステムを見てもらうことは重要ですね。

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