SPARC64 X搭載の新UNIXサーバ「SPARC M10」がついに姿を見せる

齋藤公二 (インサイト)

2013-01-18 19:31


SPARC M10
富士通が満を持して提供を開始した新UNIXサーバ「SPARC M10」

 富士通は1月18日、「SPARC64 X」プロセッサとOracle Solarisを搭載した新UNIXサーバ「SPARC M10」を発表した。ミッションクリティカルな基幹システム向けのSPARC Enterprise Mシリーズの後継にあたり、性能とスケーラビリティを飛躍的に向上させた。基幹システムにおける既存Solaris環境の統合を中心として、ビッグデータのリアルタイム分析処理といった業務システムでの利用も見込む。

 価格は、1Uの「SPARC M10-1」(1CPU16コア、512GBメモリ)が220万円から。4Uの「SPARC M10-4」(4CPU64コア、2TBメモリ)が570万1000円から。4CPUを1筐体として16筐体まで増設できる「SPARC M10-4S」(最大1024コア、32TBメモリまで搭載)は価格が1516万3000円から。M10-1、M10-4は出荷が始まっており、M10-4Sは1月末から出荷される予定。

 同社のUNIXサーバの新機種投入は5年ぶり。これまで、Oracle OpenWorld 2012での紹介のほか、評価用ベータ機の貸出などを展開してきたこともあり、100件超の商談が進むなど顧客からの関心が高いという。

  • 新プロセッサのSPARC64 X

  • 16コア32スレッドを同時実行できる

  • SPARC M10はSPARC Enterprise Mシリーズの後継

 ベータプログラムに参加したトヨタ自動車は、同製品の発表に際し「新たに搭載された仮想化機能を使い、弊社のグローバルな生産・物流関連をサポートするシステムに用いて、リソースの有効活用や性能、そして安定性の評価・検証を実施し、期待に応える結果を得ております」(コーポレートIT部 部長 岡本賢二氏)とコメント。また、みずほ銀行も「高性能・高信頼性・高スケーラビリティにより、当行の業務効率化とITコスト低減に大きく寄与する」と期待を寄せている。

スパコンで培った技術を投入

 特徴を大きく分けると、性能向上、スケーラビリティ向上、安定性向上の3つ。

 性能面では、16コア32スレッドを同時実行できる新プロセッサのSPARC64 Xにより、CPU性能が従来比7.5倍になった。また、データベース処理で多用される10進演算や暗号処理、コピー、比較、ハッシュなどの機能をプロセッサ内にビルトインする「ソフトウェア・オン・チップ」を採用したことで、10進演算で430倍、暗号処理で163倍にパフォーマンスが向上した。メモリについても、プロセッサとの距離を最小化し、DIMM16枚をCPUに直結することで高スループット、低レイテンシを実現。高密度化にともない、筐体内で自律的に循環させる水冷技術も新たに開発した。

 スケーラビリティについては、M10-4Sで筐体を連結して1台のサーバとして利用できる仕組みを採用。サーバ導入後にコアを追加していき、最大32CPU、1024コアまで拡張できるようにした。仮想化機能についても、従来シリーズと同じように、筐体単位での物理パーティション(ハードウェア層)、Oracle VMを使った論理パーティション(ファームウェア層)、Solaris Zone(コンテナ)によるOS仮想化(OS層)の3つを提供。4世代のSolaris(8、9、10、11)を同一サーバ内で混在できるようにするなど、隔離性と柔軟性を持ったサーバ統合が可能になっている。

 安定性については、プロセッサ全回路にエラー検出機構を備え、ハードウェア自身でエラー修復を行うリカバリー機構を装備。エラー検出回路は約5万3000個で、メインフレームクラスの信頼性を確保した。ドライブ、電源、ファンなどのキーコンポーネントは、ホットスワップ、冗長構成に対応する。

  • ソフトウェア機能をプロセッサに内蔵

  • ビルディングブロック方式により2コア単位で拡張できる

  • 4世代のSolarisを混在させることもできる

  • エラー検出回路を約5万3000個搭載

ビッグデータのリアルタイム分析も

 製品の具体的な利用シーンとしては、仮想化機能を使ったサーバ統合、データウェアハウス(DHW)やビジネスインテリジェンス(BI)などを含めたシステム統合などを挙げた。

 例えば、バージョンの異なるSolarisで稼働している複数の業務システムを1台(1CPU、16コア)にサーバ統合する。この場合、第1ステップでSolaris 11、Solaris 10のシステムにそれぞれ4コア割り当て、第2ステップでSolaris 9に6コア、Solaris 8に2コア割り当てて拡張するといった、事業の状況に応じた段階的な統合が可能だ(8、9はOracle Solaris Legacy Containersとの組み合わせで実現)。

 また、システム統合については、既存のSolaris環境(APサーバ、DBサーバ、フロント)を統合するだけでなく、他社サーバ環境や新規のBI/BAシステムもSPARC M10上に統合するシナリオを提案。運用軽減、コスト削減のほか、ビジネス拡大にもつながるとした。

  • 富士通製品群の中での位置づけ

  • 評価機では高いパフォーマンスを発揮したという

 同社システムプロダクトビジネス部門長 執行役員常務の豊木則行氏は「ICT基盤は、定形・非定形、分析、リアルタイムでの多様なワークロードに対応して機動的に構成できる基盤が求められている。SPARC M10は、ビッグデータ、リアルタイムBI/BA、DWHといったワークロードの処理性能を強化した」と説明した。

 なお、既存のSPARC Enterprise Mシリーズは国内で、日興システムソリューションズ、NKSJひまわり生命、小松ウオール工業、ダイエー、日野自動車、ミツカンなどの基幹システムでの利用実績がある。SPARC M10では「国内を維持・保護しつつ海外展開を進める」(豊木氏)構え。また、SPARCプロセッサの開発も継続し、次期SPARC64は28nm強化版、次々期は20nmの製造プロセスといったロードマップになっている。

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