Oracle OpenWorld 2012

Oracle Exadataの際立つ戦略性

冨田秀継 (編集部) 2012年10月29日 20時26分

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せんりゃく【戦略】

長期的・全体的展望に立った闘争の準備・計画・運用の方法。
[出典:コトバンク 大辞林 第三版]

エンジニアド・システムズはなぜ戦略的なのか

 「戦略的」であることとは、いったいどういうことであろうか。

 Oracleの「エンジニアド・システムズ」は、記者会見やセミナーを通じて何度も「戦略製品」であることが強調されている。では、エンジニアド・システムズが持つ「戦略性」は何に由来し、ユーザーやOracleに何をもたらすのか。

 同社が年次カンファレンス「Oracle OpenWorld 2012」で発表した「Exadata X3」を例に考えてみたい。

 先に結論を述べておくと、Exadataの戦略性はなにを差しおいても統合という点で際立っている。さらに、IBMなどとの全局面におよぶ争いでも高い戦闘力を発揮するだろう。そして、データベースマシンの中枢に「Oracle Database 12c」という自己変革の芽を自ら取り込むことで、その戦略性がより一層際立つことになる。

ソフトウェアのためにハードウェアを設計する

ラリー・エリソンCEO
ラリー・エリソンCEO

 Oracle OpenWorldの基調講演で最高経営責任者(CEO)のLarry Ellison氏が発表したExadata X3は、エンジニアド・システムズの特徴であるソフトウェアとハードウェアの緊密な融合によって、非常に高いデータベース・パフォーマンスを発揮する製品に仕上がった。

 ハードウェアのスペックでは、1ラックあたり22テラバイトのFlashメモリを搭載。これは前バージョンのX2と比較して4倍の数字だ。メモリ容量は1ラックあたり2テラバイトで75%増。合計で26テラバイトのFlashメモリとDRAMを1ラックに収容する。プロセッサはIntel Xeon E5-2690(Sandy Bridge、8コア)を搭載、33%の高速化を図った。

 垂直統合型製品のExadata X3は、単にソフトウェアとハードウェアを事前に構成して提供するだけでなく、ソフトウェアの性能を最大限に発揮させるためにハードウェアを設計している点が特徴だ。

 そのソフトウェアでは「Exadata Smart Flash Write Caching」により、書き込み処理性能をX2比で20倍に高速化した。また、Exadata V2で取り入れたデータ圧縮の新機能「Hybrid Columnar Compression」は、X3でさらに圧縮効率を高めることになった。大容量Flashメモリを搭載しているため、これらのパフォーマンスを向上させることができたのだ。

 米Oracleでシステムズ・テクノロジー担当シニアバイスプレジデントを務めるJuan Loaiza氏は、Oracle OpenWorldの基調講演で、「フラッシュはIT業界でさまざまな変革を起こしたが、今はその第2世代目にあたる。従来、Flashはディスクドライブのように使われていたが、現在はFlashの利点をさらに生かした使い方をしている。Exadata X3では、PCI Flashテクノロジを活用し、CPUのすぐ側に(Flashメモリを)置くことでパフォーマンスを高めた」と語っている。

  • Exadata X3のハードウェア性能

  • ハードとソフトの統合効果はデータ圧縮にも現れる

  • ソフトウェアでWrite性能を高速化

  • DRAMからあふれたデータをHDDではなくFlashに書き込む

 Exadataの登場以降、多くの大手ITベンダーが現代のメインフレームともいえる垂直統合型の製品を提供するに至っている。ソフトウェアとハードウェアの統合を一社で完結させるOracleのような企業もいれば、IBMやSAPのように一部のスタックをパートナーに開放したり、用途別に製品を用意することで「水平型」の垂直統合を志向する企業もいる。

アンドリュー・メンデルソン氏
アンドリュー・メンデルソン氏

 10月30日に開幕する「Oracle Days Tokyo 2012」に出席するため来日した、米Oracle データベース・サーバーテクノロジー担当シニア・バイス・プレジデントのAndrew Mendelsohn氏は、29日の会見で「Exadataのユニークなところは、全てのデータベースのワークロードに対応する点にある」と述べた。

 IBMやSAP、Teradataのような競合が提供する製品は、データベースはあるがOLTPには向いていなかったり、構築した環境の上でパッケージソフトが動作しないなどの欠点があるとする。

「すべてのサーバをOracle Databaseで運用できるのが強みだ」(Andrew Mendelsohn氏)

 緊密に融合させた結果、高いパフォーマンスを実現している点が「戦略的」であることを示した。しかし、これはExadataの戦略性の一部を言い当てているとしても、そのすべてを説明できてはいない。

 Exadataの戦略性は、この製品にOracle Database 12cという補助線を引いたときに際立つ。

Exadataが持つ高い戦闘力

 補助線を引く前に、シンプルな質問を設定してみよう——「パフォーマンスが上がれば上がるほど、製品が売れなくなるのではないか」という質問だ。

 つまり、ハードウェアとソフトウェアの性能が高まれば、これまで5台のシステムが必要だった処理が1台で済むようになる。この質問に対して、Oracle関係者がそれぞれの立場から回答した。

三澤智光氏
三澤智光氏
大曽根明氏
大曽根明氏

 日本オラクル 専務執行役員 製品事業統括の三澤智光氏は、Exadata X3の国内提供を発表した29日の会見後に、「Exadataは、まず競合他社のインストールベースを削っていく製品だ。それはすべてオラクルの“新規”になる」とコメントした。Oracle Databaseが稼働しているサーバでも、Exadataに置き換えられればシステムとして販売できたことになる。

 また、日本オラクル システム事業統括 ソリューション統括本部 プロダクト・ソリューション本部長の大曽根明氏は25日の会見で、SPARC T4サーバーの事例の文脈において「(ある顧客は)1000台のサーバを41台にした。25対1(のサーバ集約)だ。そのため、フィールドセールスから悲鳴が上がることもある。(売れる)台数が下がると売上も落ちる、と。ジョン・ファウラー(米Oracle システムズ担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのJohn Fowler氏)に値段を上げてくれという依頼がたくさん上がっているようだ。しかし、こういった試みはやっていくんだ、より良いサーバを安く出していくんだ、と(Fowler氏は言っている)」という。

 二人の発言を比較すると興味深い。

 三澤氏は、Exadataは依然として必要とするユーザーに届いていないという認識だ。5台が1台へと集約されるのは「数年経つとそういう議論が出てくるだろう」(三澤氏)と、ある程度先のことだと考えている。それまでは、Oracle Databaseが稼働する既存環境での置き換えが需要の中心になるだろう。大企業で多数稼働しているシステムのうち、一部の環境でExadataを導入してもらい、その効果を実感させる。「100のシステムがある企業で、まずは3つくらいから入れてもらう。そこで走り始めてから一気に拡大させたい」と三澤氏は言う。

 大曽根氏のコメントはExadataに関するものではない。しかし、Oracleの姿勢を知る意味でも非常に興味深いコメントだ。つまり、売上は下がるかもしれないが統合と集約を進めるという決意だ。

 ここでOracle Database 12cという補助線を引いてみたい。

12cという自己変革の芽

 Oracle OpenWorldで発表された12cは、速報レポートでもお伝えしたとおり、「データベースによる、データベースのための仮想化」を実現する製品だ。

 米Oracleの最高経営責任者(CEO)Larry Ellison氏は、「(史上)初のマルチテナンシー型データベースだ」と述べている。12cは、単一のコンテナに複数のデータベースを接続させる仕組みを持っている。コンテナ内の個々のデータベースは、メモリやバックグラウンドプロセス、データベースがお互いに干渉しない形で収納される。Oracleではこれを「Pluggable Database(プラガブルデータベース)」と呼んでいる(詳細はレポートをご覧頂きたい)。

 つまり、ここでも先ほど設定した質問を改めて問う必要があるのだ。先ほどは「5台が1台に」という問だったが、ここでは「25のデータベースが、5つのコンテナに」という問である。

 加えて重要なのは、12cがプロセッサライセンスでも提供されるケースだ。データベースがコンソリデーションされるだけではOracleのビジネスに悪影響はない。しかし、Exadataが5台から1台になると、ExadataだけでなくOracle Databaseのライセンス販売まで影響を受けることになる。もちろん、現在のOracle Databaseの好調なライセンス販売は、Exadataが牽引している。

遠藤隆雄社長
遠藤隆雄社長

 Oracle OpenWorldの会場でインタビューに応じた日本オラクル 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの遠藤隆雄氏は、Oracle Database 12cのライセンスについて、「プロセッサライセンスになるだろう」との見通しを示した。

 Exadataと12cの組み合わせは、三澤氏のコメントを振り返り、大曽根氏の言葉を合わせて考えると、Oracle Databaseの価値を高めさえすれば、売上が減少する可能性こそあれ、ユーザーは確実についてくるという自信が垣間見える内容だ。

 Oracleはデータベースマシンの中核に自身の稼ぎ頭を破壊する“自己革新の芽”を、自ら進んで取り入れようとしている。

ロックインについて慎重な議論を

 以上、Exadataが帯び始めた高い戦略性を解説した。まとめると、ソフトウェアとハードウェアの高いレベルでの「統合」、競合のあらゆる既存環境を引きはがしにかかる「全体性」、そして「自己革新」。これら3つの要素をExadataと12cは担うことになる。

 最後に一点だけ記したい。ユーザーはExadataの検討にあたって、ベンダーロックインの問題を慎重に議論する必要がある。ITの簡素化、そしてOracle単独でのベスト・オブ・ブリードの提供は、確実にロックインにつながる。

 今年4月に開催された「Oracle OpenWorld Tokyo 2012」で、ベンダーロックインについて聞かれたLarry Ellison氏は「オラクルにおいては、ロックインはないと考えている」と回答している

 その理由として「恒久的にExadataを使わなくてはならないというものではなく、性能、コストパフォーマンス、信頼性において、別の選択肢があれば、それを選んでいただきたい」と述べている。

 もちろん、新たな選択肢が出てからでは遅いこともある。「5台が1台に」という状況になった場合、その1台の価格が引き上げられる可能性もあるだろう。

 ユーザーはExadataの戦略性とロックインの危険性を天秤にかけて慎重に検討する必要がある。

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