西日本高速道路(以下、NEXCO西日本)は、SDN(Software-Defined Networking)を活用した基幹ネットワークを構築した。構築に携わったNECが5月7日、発表した。SDNを用いた最先端ネットワーク基盤の構築は、道路業界において珍しいとのこと。
NEXCO西日本では、交通管制システムや社内業務システムなど多様なシステムを有しており、これまでシステムごとに専用のネットワークを構築、運用していたため、ネットワーク構成が複雑になり、障害復旧に時間を要していた。また、巨大災害発生時に道路管制事業を継続する強いネットワーク作りも求められている。
そこで今回、SDNの活用により複数のシステムのネットワークを共有化し、全45拠点(高速道路事務所)総延長約4000キロメートルの通信ネットワークを柔軟で高度な経路制御により多様なルートで結んだ。これにより、道路管制センター機能のバックアップや冗長性の確保が可能となり、災害対応の強化も実現したとしている。
NEXCO西日本が今回構築した基幹ネットワークの特徴は以下の通り。
SDNを活用し、効率的なネットワーク統合制御・管理・可視化を実現
- NEXCO西日本管内の45拠点に、SDNを実現する技術の1つである「OpenFlow」に対応したNECの「UNIVERGE PFシリーズ」を導入、OpenFlow v1.3に対応した「ProgrammableFlow Controller」4台、ProgrammableFlow Switch136台を中核に、新たなネットワークを構成した。
- ProgrammableFlow ControllerのGUIで全体の物理ネットワークと論理ネットワークをそれぞれ可視化し集中制御することで、柔軟なネットワーク制御や利用状況に合わせた迅速なネットワーク変更を実現。
- 通信単位ごとの通信経路やトラフィック量等の通信状態をリアルタイムに把握できるようになり、事前の通信経路制御によってネットワーク上のサービスに影響を与えない運用、メンテナンスや、障害発生時の迅速な復旧作業が可能となる。
ネットワーク仮想化による統合化・マルチユース化を実現
物理ネットワークと論理ネットワークを分離し、単一の物理ネットワーク上に複数の仮想テナントネットワーク(VTN:Virtual Tenant Network)を構成。IPアドレス体系や通信要件の異なるサービスを個別のVTNに収容し、サービスの独立性やセキュリティを確保したマルチテナントネットワークの構築が可能となる。個別のVTNはそれぞれ独立性を保ち、既存のサービスに影響を与えることなく、追加・削除・変更等の運用・保守が可能。
大規模災害時のバックアップシステムを結ぶネットワークを容易に構築
本ネットワークは、従来のIPアドレスに依存しない柔軟で高度な経路制御により、各端末設備からの通信を遠隔地の道路管制センターに迅速に切り替え、BCP/DR(Business Continuity Plan/Disaster Recovery)システムの構築を容易にする。
また、各拠点に配置したスイッチコントローラは冗長化され、コントローラはメインセンターと遠隔地のサブセンターでデータの同期を行うため、メインセンター被災時にも、サブセンターからネットワークの全体制御を継続できる高い信頼性を実現する。