焼津市、Windowsタブレットを全庁で導入--年間3000万円を削減

江口晋太朗

2014-06-11 07:30

 ポストPC時代で業務に活用できると期待されているのがタブレットだ。だが、果たして本当にタブレットは仕事で使えるのだろうか――。マイクロソフトが6月2日に開催 した、公共部門でのIT活用を考えるイベント「CityNext ソリューションフォーラム2014」でその実態を見ることができる。

 「焼津市における全庁的なタブレット導入・活用の取り組み」と題したセッションには、焼津市 総務部 情報政策課で情報政策担当主幹を務める中島勝己氏が登壇。ノートPCの代わりにWindows 8搭載タブレットを導入した取り組みを解説した。ノートPCでは実現できない操作性や機能で3000万円のコストを削減する予定であるほか、タブレットならではの市民サービスも検討中という。

システム更新でタブレットを候補に


焼津市総務部 情報政策課 情報政策担当主幹 中島勝己氏

 焼津市では、1981年にメインフレームを導入し、運営してきた。2008年の市町村合併でメインフレームからオープン系に移行。合併に伴い、基幹業務システムや内部情報システム、通信基盤システムなどを刷新し、内部情報系端末をノートPCに変更した。

 導入時に契約したリースが2013年秋に満了することを見越した中島氏は、CPUの性能が高く、メモリ容量も大きなWindows 8タブレットに着目。条件さえ整えばタブレットは機種選定候補に入るのでは、と考えた。

 「現在使用中のシステムとの調整のなかで、Windows 8に対応し、オフィスソフトの互換性の確認がとれたため、調整範囲内でタブレット導入が可能なことが見えてきた」

タブレットのメリットを活かした環境を構築

 しかし、タブレットを導入するには職員らの理解が必要だ。庁内の調整で交わされた意見からは、持ち運ぶデバイスが必要ではない、今までと同じ仕事環境が構築できるのか、耐久性や机上スペースの確保、紛失や盗難などのセキュリティ、会議のあり方がどのように変わるのか、といった意見が挙がった。

 また、当時はノートPCでの利用を前提とした環境が構築されており、ノートPCとタブレットの比較では、価格だけではない視点での比較優位性が必要だった。

 「タブレットにないものをどう補完するか、タブレットに備わっている機能をどのような方法で活用するかを説明する必要があった」

 そこで中島氏は、タブレットがもつ二面性に着目した。従来のPCが持っている機能に対しては、モニタやキーボード、マウス、LAN配線を用 意すればPCと同じ環境を構築できる。さらに外部モニタとタブレットの2画面が利用でき、DVDなどのメディアを庁内で共有化することもできる。

 情報のビューワとしては、持ち運びに便利な端末として資料を閲覧でき、会議では資料をタブレット内で共有すれば印刷コストを省ける。サンプルを持ち込み、職員に詳細を説明したところ、職員の75%が賛同したという。

 タブレットの調達や契約では、Windows 8を562台、未対応の端末に考慮してWindows 7を110台調達。Office 2013も同時調達した。設置後1カ月間はヘルプデスク対応をマイクロソフトとの契約に記載し、職員からの問合せに対応できるようにした。5年間の総額経費と比較すると、2008年の導入時よりも約3000万円の経費を削減する予定だという。

 「振り返ると、価格だけのアドバンテージで導入を決定するのは難しく、職員に対しての意識付けが重要だった。また、タブレット単体ではなく、外部モニタの設置によって快適な操作環境を構築でき、ノートPCでは実現できない操作性を実現できた。タブレットをビューワとして活用することで、紙の消費量の削減効果に大きく貢献している」

 今後の課題として、無線環境の設備は大きな課題であり、いつでもどこでもタブレットを活用するために、庁内の無線環境は必須だと中島氏は語る。また、テレビ会議などへの利用も検討している。

 タブレットを活用した住民向けサービスをどのように発展させるかも課題とした。「タブレットの導入のみならず、市としてネットを通じたさまざまなサービスの改善や施策を展開したい。時代に対応した取り組みは、民間だけではなく自治体にも強く求められている」

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