インターネットの技術を利用しつつ、ウェブブラウザ以上に操作しやすいユーザーインターフェースを提供することを目指すリッチクライアントの世界において、特に業務システムのフロントエンドに特化したビジネスを展開しているのが「Biz/Browser」を開発するアクシスソフトだ。
Biz/Browserの最初のバージョンが発売されたのは1999年。当時は「リッチクライアント」という市場カテゴリもまだ確立しておらず、同社では、Biz/Browserを「業務システム向けブラウザ」と呼び、その呼称を現在も使用している。
アクシスソフト、プロダクト事業部執行役員プロダクト事業部長の永井一美氏は、ウェブブラウザがシンクライアントとして脚光を浴びていた当時の状況を振り返りつつ、「Internet ExplorerやNetscape Navigatorという無償のブラウザがあり、HTMLという標準技術がある中で、なぜ別のブラウザとプログラミング技法を使わなければいけないのかと、よく聞かれていた」と語る。
「その中でわれわれが訴えたのは、業務システムのクライアントとして重要な要素は何かという点だった。すなわちそれは、ユーザーが使うプラットフォーム上で、作成したアプリケーションが確実に、安定して、今後も長期にわたって動き続けることを保証すること。その点が理解され、徐々にBiz/Browserの導入が進んでいった」(永井氏)
ヤマト運輸、第一生命保険といった大手企業における基幹系業務システムのフロントエンドとしての導入を皮切りに採用が進み、日立製作所、日揮情報システムをはじめとする多くのパートナー企業との協力関係もあって、現在のBiz/Browserの導入社数は300社以上、販売実績は35万クライアント以上にのぼるという。
業務システムのUIに必要とされるリッチとは
Biz/Browserが目指すのは、HTTPのネットワーク上で、従来のクライアント/サーバシステムで用いられていたものと同等以上に、安定性と生産性の高いフロントエンドを提供することだ。
例えば、通常のウェブブラウザのHTMLとスクリプト言語によるユーザーインターフェースでは、ある入力フィールドへの数値入力後に、次に入力すべきフィールドへと自動的にフォーカスを移動するといった動作を行わせる場合に非常に手間がかかる。また、特定のフィールドへフォーカスを移動した場合に日本語入力システムを制御したり、ファンクションキーにそのアプリケーション独自の特定の機能を割り当てるといったこともできない。さらに、入力されたデータが正当なものかどうかをクライアント側で詳細にチェックするといったことも不得手だ。Biz/Browserでは、こうした機能をユーザーインタフェース側に盛り込むことができ、ユーザビリティの高いクライアント環境を実現できる。
また、Biz/Browserでは、一度クライアントPCへユーザーインタフェースコンポーネントのダウンロードを行えば、配信サーバ側での更新が行われない限り、再度のダウンロードは行わない。さらに、Biz/Browser上で入力されたデータはクライアント側にキャッシュされ、送信の指示を行ったときに初めてサーバに送られる。このため、ページを遷移するたびにデータを送受信する必要があるウェブブラウザの環境に比べて、ネットワークの通信量も削減される。また、低速回線での利用にも耐えるため、通信速度が遅いモバイル環境を前提にしたシステムでの利用も可能になる。
現在発売されているバージョンでは、ユーザー企業からのリクエストをフィードバックし、強力なセキュリティ機能や、複数のアルゴリズムによるデータの暗号化、データ改ざんの検出、画面のハードコピーの禁止といった機能が搭載されている。また、日本語に加え、1つのアプリケーションで英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語に対応することも可能になり、グローバル展開を行う企業での導入も容易になっている。ユーザビリティの向上という観点では、Biz/Browser上でのドラッグ&ドロップによるオブジェクト操作が可能になったほか、スマートカードやUSBトークンといった外部デバイスの制御を可能にするプラグイン機能も盛り込まれている。これらはまさに、業務システムのフロントエンドに特化した製品ならではのポイントと言えるだろう。