開発環境に求められるリッチとは
Biz/Browserで利用するユーザーインターフェースを作成するためのツールが「Biz/Designer」と呼ばれる開発環境である。フォーム上にボタンや入力フィールドなどを貼り付けていくビジュアルなデザイン環境と、スクリプト言語のコーディング環境を備えた、Visual Basic風の2ウェイツールだ。同社では開発者にとって生産性の高い「リッチな」開発環境を提供することも、リッチクライアントの定義のひとつととらえているという。
「Biz/Browserによるアプリケーション構築はブロックを組み立てるようなイメージ。Biz/Designer上で、業務に必要なコントロールを組み合わせていけば完成する。業務システムの開発に必要な機能は、すべてパーツとしてあらかじめ用意されていると言ってもいい」(永井氏)
同社では、開発生産性の高いBiz/Designerの存在がBiz/Browserの評価につながっていると考えており、その機能強化には、高いプライオリティが与えられている。効率の良いデバッガ、オブジェクト命名規約の自動的な統一機能、ドキュメントの印刷機能といった開発者の詳細なニーズに合わせた機能が数多く搭載されているほか、2006年春には、画面遷移図の自動生成機能やプラグインによる機能拡張などをサポートするマイナーバージョンアップも行われるという。
アクシスソフトのプロダクト事業部でフェローとしてBiz/Browserの開発に携わる田中康興氏は、「今後、機能強化が積極的に行われるのは開発環境側だろう。業務システムの開発と運用には、コストの考え方が常に必要で、同じコストをかけてどれだけ高い効果が得られるかが重要になる。いかに運用を容易にして、開発コストを下げるかといった点にフォーカスする」という。
また、近年注目を集めるAjaxについては、「現時点では確立されたものではなく、営業上の直接的な競合になるとは考えていない」とする。
「リッチクライアントの開発にあたり、どのようなテクノロジーを使うにしても、ユーザーが求めている結果は同じで、異なるのはその過程と実装方法になる。その中で、どこを一番重要と考えるかによって、選ぶ手法も変わってくるはずだ。例えば、Ajaxの場合は、クライアント側をいじりたくない場合やいじれない場合などに有効になる。業務システムへの適用は今のところ無理だが、将来的な選択肢にはなるだろう。ただし弊害もある。クライアント側を全くいじらないということは、クライアント側の環境をコントロールできないということ。業務システムに重要な安定性や互換性に関する問題は、この先もついてまわる。これは直近に解決できる問題ではない」(田中氏)
進化するユーザーインターフェースとは?
ウェブ型業務システムのフロントエンドとしてのニーズに特化し、開発者に対してもリッチな開発環境を提供することでプレゼンスを高めてきたBiz/Browser。さらに将来的な構想としては、「ユーザーインターフェースの進化」があるという。
永井氏は、「まだ研究の段階」と前置きした上で、「ウェブ型システムの最大のメリットは、1つのアプリケーションをサーバにおいて、それをみんながダウンロードして使える点だろう。これによって、アプリケーションの配布管理コストは削減できる。しかし、実際に使うユーザー一人ひとりにとって、最も使いやすいユーザーインターフェースは違うものなのではないかという考え方もある。エンドユーザーが、自分が最も使いやすい形にユーザーインターフェースをパーソナライズしたり、誰かが使いやすいものを考えたときに、それを共有できるような仕組みがあったらどうだろう。ユーザーが能動的にシステムを“使っている”という感覚を持つことで、企業全体の生産性が上がる可能性もあるのではないか」と語った。
また、ユーザーによるフロントエンドの利用状況の詳細なログを取得し、それを分析することで、より使い勝手の良いユーザーインターフェースへと継続的に改良を行っていくための機能なども視野に入れているという。
業務システムのフロントエンドにおいて、エンドユーザーと開発者のそれぞれにメリットがある「リッチさ」とは何か。Biz/Browserの今後の方向性は、この問いに対する答えを追求する過程で見えてくると言えそうだ。