ロサンゼルス発--Microsoftは現在、近い将来登場するWindowsの新バージョンに開発者の目を向けさせようとしているが、その一方でMac OSやウェブ上で動作するアプリケーション用の開発ツールの構築も進めている。
Microsoftは、開催中の「Professional Developers Conference(PDC)」で、同社の新しいフロントエンド開発ツールを使えば、次期Windows OS「Vista」以外のOSで動作可能なアプリケーションを開発できると語った。
同社は「Windows Presentation Foundation Everywhere(WPF/E)」というソフトウェアを発表したが、これを使えばMicrosoftのXAMLページレイアウト言語とJavaScriptを併用してアプリケーションを構築できる。
MicrosoftのWindows Presentation Foundation(開発コード名:「Avalon」)はこれまで、高度なグラフィックス機能を駆使するWindows向けアプリケーションの構築にしか利用できないと考えられていた。しかし、JavaScriptは多くのOS上で動作可能なことから、WPF/Eツールを使えば複数のOSをターゲットにしたアプリケーションがつくれることになる。
Microsoftの幹部らによると、WPF/Eは、旧バージョンのWindowsやMicrosoft Smartphone以外に、AppleのMac OSもサポートすることになるという。MicrosoftのForrest Key(開発ツール部門グループプロダクトマネージャ)は、ほかのOSをサポートする計画もあると語ったが、Linuxをサポートするかどうかは明らかにしなかった。
「約1年前に、われわれはさまざまなOSをサポートする必要があることを認識した」とKeyは述べ、それがWPF/Eの開発につながったと説明した。「今後さらに多くのプラットフォームをサポートしていく」(Key)
WPF/Eは来年後半、Windows Vistaの出荷と同時に発売されると、Keyは述べた。また別のMicrosoft幹部は、Microsoft社内では現在Mac OS版のプロトタイプが稼働していると語った。
WPF/Eは、Windows Presentation Foundationが提供するユーザーインタフェース開発用ツールのサブセットであるため、Windowsと同じレベルのグラフィカルな表現はできない。エンドユーザーは、XAMLコードを動かすために「ランタイム」をダウンロードする必要があるが、その容量は1メガバイト未満に収まる予定だ。
Microsoftの幹部らは今週開催されているPDCで、プレゼンテーションデザインの重要性をさまざまなやり方で強調した。同社幹部らによると、大半の企業がウェブサイトを公開していることから、ソフトウェアの「ユーザーエクスペリエンス」で差別化する必要性がますます高まっていくという。
この目的に向けて、Microsoftは2006年後半の発売が見込まれる「Expression」ブランドのデザイン関連ツール製品群を米国時間13日に発表した。これらの製品は、Windowsやウェブブラウザ向けに、アニメーションやマルチメディアを盛り込んだアプリケーションを開発する際の、プロセスの簡略化を狙って開発されたものだ。
Expressionシリーズの1つである「Sparkle Interactive Designer」は、XAMLを使って、アニメーションやグラフィックを多用したフロントエンドを開発するためのツールで、広く普及しているAdobeのFlashフォーマットと競合すると見られている。
クリーンで効果的なデザインが重要であるという点は、一般向けのウェブサイトでも、社内向けのビジネスアプリケーションでも変わらないと、Directions on MicrosoftのアナリストGreg DeMichillieは指摘する。たとえば、お粗末なつくりのセールス用アプリケーションを使っていると、営業担当者が顧客情報の入力をギリギリまで後回しにしてしまう。その結果、この担当者はその後の営業活動に有益な情報があっても、それを知る機会を逃してしまうことになりかねない。