インターネットの至る所に設置されているネットワーキング機器の提供元であるCiscoは米国時間5月18日、配電網向けの通信機器を製造する意向を発表した。それらの通信機器には、配電網の変電所内のルータから、家庭のエネルギーコントローラまでが含まれる。Ciscoの最高経営責任者(CEO)であるJohn Chambers氏は18日の午前、ボストンで開かれるJP Morganのカンファレンスで、Ciscoのスマートグリッドへの積極的な取り組みについて講演した。
Ciscoの動向は、老朽化した配電システムがデジタルアップグレードを施すべき時期にきていることを示している。IBMやIntel、新興企業数社を含むほかのハイテク企業は、電力会社や連邦政府が実施すると見られる投資から利益を得るため、スマートグリッドへの取り組みを強化している。Ciscoの試算によれば、スマートグリッドへのアップグレードに伴う通信分野の市場は、向こう5年間に渡り、1年当たり200億ドルの規模になるという。
スマートグリッドの狙いは、デジタル通信を配電網に組み込むことで、電力業界を近代化することだ。例えば、個人の家に設置されたスマートメーターは、エネルギー使用状況をほぼリアルタイムで電力会社に伝えることができる。これによって、電力会社はより能率的に電力供給を管理できるようになり、消費者も料金の値下げという恩恵を得られる可能性がある。
Ciscoは2008年秋から、スマートグリッド分野に参入するための戦略を練りはじめた。いくつかの電力会社は既にCiscoのルータやスイッチを使った試験を開始しており、それらを導入することで電力の流れを能率的に管理し、配電機器の停電を防止することが可能なのかをテストしている。さらに、Ciscoは2009年に、オフィスビルでのエネルギー使用を管理するためのソフトウェアである「EnergyWise」をリリースした。
Ciscoのスマートグリッドプログラムは、データセンター向け機器など、既に製品ポートフォリオの一部であるものも網羅している。しかし、Ciscoのネットワーク・システム・ソリューション・グループのマーケティング担当バイスプレジデントであるMarie Hattar氏によると、ホームネットワークやスマートメーターのセキュリティなどに関しては、同社は新製品を開発しているという。
例えば、Ciscoは同社の「Linksys」ルータ向けホームエネルギーコントローラ機器およびソフトウェアとセットトップボックスを製造し、消費者がさまざまな機器のエネルギー消費量を確認できるようにすることが可能だ。