Intelは、研究プロジェクトの一環として80コアプロセッサを開発した。しかしこれを使用してDoomのスコアが向上するのはまだ先になりそうである。
同社最高技術責任者(CTO)であるJustin Rattner氏は先週サンフランシスコにおいて、記者団を前に同プロセッサを公開した。また同社は今週同市で開催されるInternational Solid State Circuits Conferenceにおいて、本プロジェクトに関する論文を発表する予定である。
同チップは1テラフロップ、つまり1秒あたり1兆回の浮動小数点演算が可能である。10年前には同レベルの性能を得るには2500平方フィート(232平方メートル)もの面積に大規模コンピュータを並べる必要があった。
Intelは2006年秋のIntel Developer Forumにおいて、80コアプロセッサのプロトタイプを開発したことを初めて発表した。その際、同社最高経営責任者(CEO)であるPaul Otellini氏は同チップを5年以内にリリースすると公言した。Rattner氏は、80コアプロセッサをパソコンやサーバに搭載するには、チップをどのようにメモリに接続するか、どのようにしてソフトウェア開発者にプログラム記述方法を教育するかなど、まだ同社の研究者らが乗り越えるべき課題がいくつか存在するが、それでも同プロトタイプの試作は重要な第一歩であると述べた。
ClearSpeedというメーカーは、96基のコアを単一のチップに搭載している。ClearSpeedのチップは、非常に特殊な用途向けに強力なチップを必要とするスーパーコンピュータのコプロセッサとして使用されている。
Intelの研究用プロトタイプチップには80基の「タイル」と呼ばれるコアが搭載されているとRattner氏は述べた。各タイルには演算要素とルーターが搭載され、それぞれ独立してデータを処理し、そのデータを近隣のタイルに伝送することができる。
Intelはこのチップ上に1億個ものトランジスタを使用しており、その占有面積は275平方ミリメートルである。参考までに同社の「Core 2 Duo」チップには2億9100万個のトランジスタが使用されており、その占有面積は143平方ミリメートルである。同チップはIntelの65nm製造技術を用いて構築されているが、同設計に基づき今後開発される製品は、より小さいトランジスタを用いた微細な製造プロセスを使用することになる。現在のプロトタイプチップのサイズでは、コスト効率のよい製造を実現するには大きすぎると思われる。
演算要素は非常に基本的なもので、IntelやAdvanced Micro Devicesのチップが用いるx86命令セットを使用しない。つまり、「Windows Vista」をこのプロトタイプチップ上で実行することはできない。同チップは、x86命令セットよりも単純な命令方式であるVery Long Instruction Word(VLIW)アーキテクチャを使用している。