Oracleなどの大手ソフトウェアベンダーが一部のソフトウェアのサービスメニューをASP形式で提供していることを除いては、これまで日本進出を果たしたASP事業者というとSalesforce.comのみというのが現状だった。そこへ新たに日本進出を果たしたのがNetSuiteだ。
NetSuiteは、くしくもSalesforceのCEO Marc Benioff氏と同じくOracle出身者で、現在NetSuiteのCTOを務めるEvan Goldberg氏と、現在もNetSuiteの大株主となっているOracleのCEO、Larry Ellison氏が、NetLedgerとして1998年に米国で創業した企業だ。1999年に最初の製品を導入し、2002年に中小企業をターゲットとしたCRM、ERP、Eコマースの統合ビジネスASPスイート「NetSuite」をリリースした。
ネットスイート日本法人社長に就任した東貴彦氏
ネットスイート日本法人が設立されたのは2006年4月1日で、セールスフォース・ドットコムより6年遅れてのスタートとなる。日本法人の社長に就任したのは、マイクロソフトに12年間在職し、ビジネスソリューショングループ経営戦略担当上級執行役兼取締役などを務めた東貴彦氏だ。NetSuiteは米国にて2006年中に株式公開を予定しており、将来的には日本法人での株式公開も視野に入れている。
日本法人が設立されたばかりとはいえ、グローバル市場で事業を展開していたNetSuiteは、すでに日本国内でもユーザーを抱えている。例えば、ソフトウェア企業のアゾラテクノロジーズ、金融サービスを提供するメイヤー・アセット・マネジメント、卸売販売業のカファ有限会社などが同社の顧客だ。全世界での導入社数は約7000社で、ユーザー数は約10万人。Salesforceの2万5000社、40万ユーザーには及ばないものの、「3年でSalesforceに追いつくことを目標としている」と東氏は述べている。
東氏は、これまでのASP事業者と、最近になって新たに登場したキーワード「Software as a Service」(SaaS)事業者との違いを明確に分けて定義している。それは、「従来のASPは、パッケージ版として提供していたソフトウェアを、ウェブでも提供する方式だったが、SaaSはウェブに特化したアプリケーションを提供する」という点だ。
東氏はSaaS業界について、「日本でSaaS形式の業務アプリケーションを提供しているのは、現段階ではSalesforceとNetSuiteのみだが、米国では会社の業務を部分的にアウトソースする感覚で、人事代行や給与計算、さらにはオンラインバンキングなど、業務・業種別のSaaSが多く存在する」と話す。
NetSuiteでは、ERP、CRM、Eコマースの3つのアプリケーションを統合して提供している。特徴的なのは、この3つのアプリケーションを結ぶデータベースが1つのみという点である。1つのデータをさまざまな形式で見せることで、ERPやCRMなどの機能を実現するのがNetSuiteだ。東氏は、「単一データベースのマルチビュー形式を実現することで、アプリケーション間のデータ移行などがスムーズに実行できる」とNetSuiteの強みを説明する。
また、ERP、CRM、Eコマースという3つの組み合わせについても、「これらを中小企業に向けてすべて提供できているベンダーはまだ存在しない」と東氏。つまり、これまで別々のマーケットとして認識されていた市場がすべてNetSuiteのターゲットとなると言うのだ。「ユーザーは、それぞれのアプリケーションを単独で利用することもでき、各機能を連携して利用することもできる。例えば、ネット上でショッピングモールを立ち上げるためのツールはすべて揃っており、商品を展示させるためのツールやデザイン機能、決済機能なども用意されている。また、CRMを使ってネット店舗とリアル店舗というマルチ営業チャネルを連動させ、統合した管理も可能だ」(東氏)
さらにNetSuiteでは、大企業もターゲットとしている。それは、「特に複雑な企業間取引が多く存在する日本市場で有効だ」と東氏は語る。同氏は日本市場の特徴として、「日本の企業の多くは、ディストリビューターとリセラーという関係が成り立っている場合が多い。企業同士の関係も大企業の子会社や関係会社、フランチャイズ関係などが数多く存在し、何らかのBtoB取り引きを行っている」と説明する。こうした取り引きのためのシステムは非常に高価で、システム構築の手間も多大となるが、「子会社や取引会社を多く抱える大企業がNetSuiteを利用すれば、BtoBのシステムが容易に構築できる。例えば各リセラー向けの個別ポータルを立ち上げることもでき、リセラーごとの価格設定やキャンペーンなど、それぞれに特化した情報を提供することも可能だ」と、東氏は大企業をターゲットとした市場での可能性について語った。こうしたBtoB形式での利用の提案を日本国内ではじめた結果、すでに10社以上からの問い合わせがあったという。
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