ビジネスソフトウェアアプリケーション大手SAPは米国時間2日、顧客関係管理(CRM)ソフトウェアのホスティングサービスを発表し、競争が激化しつつある市場への参入を果たした。
SAPはCRMホスティングサービスを公にするとともに、IBMなどの業界大手企業数社を新たなオンデマンド事業パートナーとして迎えたことを明らかにした。
SAPがシェア獲得をもくろむCRMホスティングサービス市場は拡大の一途をたどっており、この分野のパイオニアであるSalesforce.comや、Siebel Systemsの買収を通して同事業に力を入れるSAP最大の競合社Oracle、2005年11月にサブスクリプション方式のCRMホスティングサービスを発表したMicrosoftといった企業が競争を繰り広げている。
SAPは、オンデマンドCRMホスティングサービスの市場投入に際して、大企業および中規模企業を対象とするハイブリッドなサービス提供を目指していくと述べている。
同サービスは、1ユーザー当たり月額75ドルで利用できる。売上情報や顧客情報、顧客の連絡先情報などを簡単に管理できるよう設定可能なツールや、デスクトップ生産性アプリケーションを統合するための同期機能などが搭載されている。
SAPの製品/技術部門プレジデントShai Agassiは、「今回のサービス提供計画は、当社の顧客に何が必要なのか尋ねることから始めた」と話し、「われわれのユーザーが求めていたのは、継続的に運用可能な戦略的なCRMサービスであることがわかった。彼らは、断片的な顧客情報ではなく、その全容を把握したいと考えていたのである」と説明した。
SAPは同サービスに搭載された2つの機能が、競合社との差別化を図るうえで役に立と考えている。そのうちの1つは、企業内の複数のユーザーがソフトウェアの同じマスターコピーを共有しながら、これを自身の独立したシステム上で利用できるようにする機能だ。SAPのCRM製品/戦略担当バイスプレジデントBob Stutzは、同機能を実装した目的を、利用ピーク時に全ユーザーが「パンク状態」に悩まされることがないようにすることだとしている。
またSAPは、同サービスで採用したハイブリッドモデルについても声高にアピールしている。ハイブリッドモデルでは、ユーザーが、オンデマンドのCRMを利用する形態から、社内でSAPソフトウェアを保有し管理する形態へ移行することが可能になる。同社のねらいは、ユーザーが利用中のSAP CRMオンデマンドシステムに任意のカスタマイズを施し、それをローカルで管理しているシステムに移植できるようにすることだという。同オンデマンドサービスは、SAPのバックオフィスソフトウェアに緊密に統合することもできる。
AMR ResearchのアナリストRob Boisは、「SAPの新サービスは、同社の既存顧客の存在を意識している。われわれもユーザーと話をしたところ、そうした機能は有用だが、オンデマンドソリューションを選択する際にまっさきに参照する基準ではないと考えていることがわかった」と述べる。
Boisはさらに、ユーザーがオンデマンドCRMサービスの利用を止め、SAPのCRMソフトウェアライセンスを取得して使用する場合、データの移動といった手間のかかる作業からは解放されるが、サーバベースの複雑なソフトウェアをインストールしなければならないという問題があると指摘した。