ビジネスウェブの中核企業を目指すセールスフォース:ソフトウェアのオンデマンド化を推進するASP(1)

藤本京子(編集部)

2006-04-04 18:31

 業務用ソフトウェアをパッケージとしてではなくインターネットを介して提供し、ソフトウェアの機能をブラウザ上にてレンタル形式で提供するASP(アプリケーションサービスプロバイダー)。ASPは1990年代後半に登場して注目されたが、当時は業界が期待したほど普及しなかった。それが、ここにきてASPは「Software as a Service」(SaaS)という新たなキーワードを掲げて再び脚光を浴びつつあり、ソフトウェアをパッケージ販売する企業も含め多くの企業がウェブを介したソフトウェアのオンデマンド化に乗り出しはじめている。

 このASPモデルを最初に成功させた企業といえば、1999年米国サンフランシスコにて創業したSalesforce.comだろう。同社は「No Software」というスローガンを掲げ、物理的なソフトウェアパッケージを全く持たずにソフトウェアの機能をウェブ上にてオンデマンドで提供してきた。2000年には日本法人も設立し、現在同社のサービス利用者は全世界でおよそ40万ユーザー、導入企業は2万社以上に上る。

Salesforceの強みと「AppExchange」の意義について説明するセールスフォース・ドットコム社長の宇陀氏

 ASPが登場した1990年代後半、このサービスが普及に至らなかったのは、当時ブロードバンド環境が整っていなかったことが大きな要因のひとつとされている。2004年4月にセールスフォース・ドットコム 代表取締役社長に就任した宇陀栄次氏も、「就任前は、ASP、CRM、ドットコムといった、過去に失敗したキーワードばかりが3つも並ぶこの世界に飛び込むことに対するトラウマがあった」としているが、「ネットワークのコストパフォーマンスは、従量課金だった当時の1000倍以上にもなっている。Salesforceでも、これまではすべてにおいて“倍”の成長を続けている。今後市場規模は10倍になるだろうし、わが社のスタッフにも、(売上に限らず)さまざまな面で“単年で10倍を目指せ”と指示している」と言う。

 宇陀氏は、これまでのソフトウェアパッケージを自家用車に、ASPサービスをタクシーに例え、「急ぎで今から東京駅に行くためだけに自家用車を購入する人はいない。これまでのソフトウェア業界には自家用車しか存在しなかったが、初期コストが安価ですぐに使えるタクシーのようなASPサービスの存在が必要だった」と述べ、ASPの存在意義を主張した。

ビジネスウェブを実現する新サービス「AppExchange」

 創業から一貫してCRM機能をウェブ上にて提供してきたSalesforceだが、同社は2005年9月にあらゆるビジネスアプリケーションをSalesforceのプラットフォーム上で提供するという「AppExchange」を発表した。AppExchangeは2006年1月に日本でも発表され、同時に正式サービスを開始している。

 Salesforceでは、AppExchangeを「ビジネスウェブ」というキーワードを用いて説明している。つまり、一般コンシューマーに向けたiTunes Music StoreやAmazon.comなどのウェブプラットフォームに対して、ビジネス向けのプラットフォームがビジネスウェブというわけだ。

 1月の日本での発表時に来日したSalesforce.comのマーケティング統括責任者(CMO)Phill Robinson氏は、「これまでにもソフトウェアの機能をASPで提供する企業は数多く存在していたが、こうした機能をひとつの場所で提供できる共通のプラットフォームが存在しなかった」と述べ、本を探したい時のAmazonや音楽を探したい時のiTunesのように、ビジネスアプリケーションを探したい時のAppExchangeとなることを表明していた。

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