クラウドコンピューティングがITの世界を支配することはないだろうが、ソフトウェアベンダーは大騒ぎすることになるだろう。GoogleとAmazonはクラウドコンピューティングの勝者になるだろうが、得られるものは比較的わずかである。また、コンシューマーと企業顧客の両方に向けて、クラウドデベロッパースタックを提供するという競争がある。
これらは、Bernstein Researchの「The Long View: Netbooks, Wireless and Cloud Computing--Client Software's Imperfect Storm」というレポートから抜き出した重要なポイントである。
米国時間12月11日付けのMicrosoftに関する分析でも取り上げたこのレポートは、クラウドコンピューティングの状況を綿密に記述し、その中でAmazonの位置を明らかにしたという点で注目に値する。BernsteinのアナリストであるJeffrey Lindsay氏は、前評判の高かったAmazonのクラウドコンピューティングサービス(「Simple Storage Service(S3)」、「Elastic Compute Cloud(EC2)」など)は実際に売り上げをもたらすというよりも、「人目を引くための要素」であって、Amazonをオンライン小売業者以上の存在としてアピールしようとするものだと述べている。
「AmazonがクラウドWebサービスの先駆けであることは間違いないだろうし、アナリストの中には『Books to Bits』という宣伝を鵜呑みにしている者もいるが、AmazonのWebサービスがもたらす売り上げは実際には微々たるものだと考えている」とLindsay氏は調査ノートに記している。
詳しい検討に入る前に、クラウドコンピューティングの現状を確認しておくことにしよう。Lindsay氏は、各ベンダーが構築しようとしているクラウドスタックを整理した以下の分かりやすいチャートを作成した。漏れているベンダーがいくつかあるものの、全体像を見事にとらえている。
注目すべきは、Sun Microsystemsは数多くのクラウドインフラストラクチャを手がけてきたが、いまだに事業として収益を上げるに至っていない点である。このチャート以外、Lindsay氏のレポートでSunが言及されている箇所はほかにない。主にAmazon、Google、Microsoftの3社に焦点が当てられている。結論としては、Microsoftはクラウドコンピューティングおよびサービスとしてのソフトウェア(SaaS)によって損害を被るだろうが、その規模は予想を下回るものとなるだろう。