富士通は6月9日、経営方針説明会を開催した。同社 代表取締役社長の黒川博昭氏は、まず2005年度の総括として「利益成長は目標を達成したが、売上成長が課題だった」とした。同社が4月に発表した2005年度の決算は、営業利益は前年比13.3%増の1814億円だったが、売上高は前年比0.6%増の4兆7914億円にとどまっている。
2005年度の富士通のビジネスの構造を見ると、システムプラットフォームやサービスなどを提供するテクノロジソリューション事業の売上高が2兆9839億円と、全体の57%を占めている。営業利益に至っては同事業が全体の69%を占めるなど、富士通にとって中核となるビジネスだ。今後もこの事業は同社の中心となるが、より成長するためには「国内でのサービス事業の採算性を上げることや、海外ビジネスを拡大すること、プロダクト事業および新規事業を拡大することがテーマだ」と黒川氏は述べた。
富士通ではこの中核部門を2つに分けている。ソリューションやSI、インフラサービスを手がけるサービス事業と、システムプラットフォーム事業だ。サービス事業における国内での売上は69%で、システムプラットフォーム事業の国内売上は73%と、国内での売上比率が非常に高い。しかし、成長率においては海外が両事業共に順調な伸びを示しているのに対し、日本国内ではすべてマイナス成長となっている。
そのため黒川氏は「国内事業の見直しが必要だ」としている。その具体策のひとつとして、粗利益率が約10%程度というSI事業中心から、粗利益率が20%台というパッケージや運用サービスにシフトすることで収益力の向上を図る。
黒川氏は、これまで主にシステム作りを重視していたが、「運用を重視したビジネスに変革する」と述べている。2005年に発生した東京証券取引所でのシステムトラブルについても触れ、「お客様のシステムをあずかっているという意識を再度高め、原点に戻って“運用からビジネスがスタートする”と考えたい」と述べた。
また、SIビジネスの収益力も向上させるため、プロジェクトのマネジメント力を強化する。SIの不採算プロジェクトについても、「リスクを取らない限り次のSIビジネスにつながらないので不採算プロジェクトはゼロにはならないが、2005年度の損失額100億円から2006年度は50億円まで低減させるのが目標」としている。
さらに、アウトソーシングビジネスの拡大、中小企業市場に注力することなども視野に入れている。
海外事業の成長率が高いのは、これまで海外での事業展開が本格的でなかったこともあるが、黒川氏は「今後さらに海外での成長を加速させる」としている。そのために、同社の推進するIT基盤「TRIOLE」や、ASPおよびホスティングサービスなどをグローバルなサービスインフラとして共通化した上で、国や地域に適したサービスを提供する。
こうした計画の下、富士通ではテクノロジソリューション事業の業績目標として、2005年度の売上高2兆9839億円から2006年度には3兆1800億円へ、営業利益を1642億円から1850億円まで伸ばすことを目標としている。なお、全社的な目標値は、売上高5兆2000億円、営業利益1900億円となっている。