.....さて今回は、PerformancePoint Server がフォーカスする分野であるパフォーマンスマネジメントに関連して、特に大企業ではもはや当たり前となりつつあり、かつ多くの問題をはらんで見直しの機運にあるといわれる成果主義と、近年もてはやされる見える化アプローチの拙速な導入に共通する落とし穴について考えてみました。
本エントリー内では成果主義の厳密な定義を追及することに意味がないので、ここでは年功序列による組織の硬直化に対処するために導入された評価方法、ぐらいの広さでとらえてください。ご存じのとおり、バブル崩壊後に企業の高コスト体質改善のための手段として成果主義への移行が盛んとなりました。詳しくは他のジャーナルや Wikipedia あたりに譲るとして、成果主義の問題点として、評価サイクル (通常 1 年以下でしょう) より長い視野での活動が軽視される、評価基準があいまいだと不満がたまりやすくなる、格差拡大により下位層のモチベーション維持が難しくなると、いったことが挙げられているかと思います。しかしもちろんこれらは職種によって事情が異なります。成果がはっきりしている職種、たとえばかつての私の仕事である証券営業や、保険のセールス、清涼飲料水の自販機設置の営業など、同じ、もしくは差別化要因がほとんどない商品の販売競争を行っている人の場合、多くは月や日の単位でノルマが設定されており、それを達成できるかどうかのみで評価されます。私がいたころの証券会社は厳密な成果主義ではありませんでしたが、ノルマを達成できないことによる精神的なプレッシャーは相当なもので、それが日々訪れるわけですから、金銭には結びついていなくても実質的には成果主義のようなものでした。保険などの販売はほぼ完全に歩合、つまり直接金銭に結びつく成果主義です。
このような会社の営業所に共通する要素があります。ドラマなどで見たことがあると思いますが、ホワイトボードに営業マンの名前と数字や花のマークで成績書き出されている、あれです。そう、これらの会社では昔からアナログな見える化がおこなわれていました。会社から強制された仕組みというわけではなく、営業所長が営業マンを鼓舞するための運用、いわば現場力の向上のための見える化です。しかしこの方法が有効なのは、成果の尺度がはっきりしていて、かつ個々人の成果への貢献もまたはっきりしている場合に限定されます。自部門内や他部門とチームで仕事をする事務職の人の成果への貢献度を測るのは非常に難しいですし、成果そのものの定義すらできないかもしれない。間接的に売上に貢献していることは想像できるけれども、何%貢献しているかなんて誰も定義できませんし、あまりに遠いところの成果を無理やり自分の評価尺度にされても、じゃあがんばろうかという気にもなれないでしょう。
組織にとって成果が重要なのは当然なのですが、それをそのまま人材評価にするところには無理があるというより無責任すぎます。組織はその人にどうあってほしいかを先に提示する必要があります。それはつまり戦略です。