サイボウズとマイクロソフトは9月28日に共同会見を行い、グループウェア製品の開発および提供において業務提携を行うと発表した。
提携に基づき、サイボウズは「Microsoft SharePoint Server」を開発プラットフォームとする新しいグループウェア製品を開発。2010年上半期中の提供を目指す。また、新製品のマーケティングおよび販売活動を共同で行っていくという。
会見には、サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏と、マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏がそろって出席した。
具体的な製品の内容については、「最終的にはユーザーへのヒアリングを行って決めていく」としているものの、大規模企業での利用を想定したもので、「ゼロから新しいものを作るつもりはなく、現状持っている製品から、SharePoint上で利用できる機能を切り出し、乗せていくことを考えている」(青野氏)とする。
共同での販売・マーケティング施策については、開発中の製品についての先行情報提供サービスを実施するほか、共同での製品ニーズのヒアリング、協業に関するプロジェクトチームの設置、マイクロソフト大手町テクノロジーセンターにおける共同提案などを行っていく計画としている。
青野氏は、今回の提携に至った経緯について、中堅・中小規模企業における同社グループウェア「サイボウズOffice」がトップシェアを維持し続ける一方で、大規模企業向け製品ではシェアが伸び悩んでいる点を示唆。また、世界展開を視野に入れ2001年6月に米国現地法人を設立し、製品をリリースしたものの2005年7月には清算するなど、世界市場への進出に対して壁を感じていたとする。
「これまで独立独歩でやってきたが、単独での事業展開には限界を感じた。今後は、協業による事業拡大を目指す。今回のマイクロソフトとの協業は、われわれにとって10年に1回あるかないかの大きなチャンス。SharePoint上で動く最高のグループウェアを提供したいと考えている」(青野氏)
一方の樋口氏は、2010年度の経営方針として「パートナーシップの重要性」の再認識を挙げている点に言及。SharePoint Serverについては、コラボレーションによる生産性の向上と企業で求められる情報管理を両立する「ビジネスプラットフォーム」であるとし、「パートナーシップを前提とした製品である」点を強調した。同氏によれば、SharePoint Serverは現在、ワールドワイドで累計1万7000社、累計1億ライセンス以上のインストールベースを持っているという。また、同製品のパートナーは全世界で2250社、国内で30社以上におよんでいる点を指摘し、新たなパートナーの1社としてグループウェアを開発するサイボウズに対しては「特に、日本のビジネス習慣になじむ味付けを期待する」と述べた。
今回の提携で、マイクロソフト側は日本のユーザーに広く支持されているグループウェアのノウハウを持つ開発パートナーを得られ、一方のサイボウズ側はこれまで振るわなかった国内大規模企業に向けたアプローチを強化できると同時に、米国をはじめとする海外市場への再挑戦の足がかりを得ることができる。会見では、青野氏、樋口氏ともに「Win-Winの提携」である点を強調した。
SharePointをベースとした新たな製品の開発にあたり、サイボウズでは「既存製品ラインの開発も縮小せずに続ける予定」としている。同社が現在大規模企業向け製品として推進する「サイボウズ ガルーン」については、「今後、(新製品と)一本化したほうがいいという判断もあり得るが、今のところは考えていない。引き続き、稼働プラットフォームとしてLinuxを利用したいといったユーザーニーズはあると思っている」(青野氏)と述べた。