マイクロソフトは12月5日、不特定多数のユーザーに利用される共有コンピュータを管理するためのツール「Microsoft Shared Computer Toolkit (SCT) for Windows XP」について、プレス向け説明会を開催した。同ツールは、英語版が2005年9月19日にリリースされており、日本語版の提供開始は、12月15日を予定している。
マイクロソフト プロダクトデベロップメント Windowsプラットフォームグループ リードプログラムマネージャの衛藤隆司氏は、共有コンピュータの課題として「Windowsは、個人での利用を想定し、パスワードの記憶やインターネットの履歴、オートコンプリートなどの機能が提供されているため、プライバシーやセキュリティの確保が難しい。また、共有コンピュータではシステムの設定が変更される可能性があるほか、スパイウェアやウイルスが入り込む恐れもあるなど、1ユーザーの行為がほかのユーザーに悪影響を及ぼすことがある。管理者側としても、こうした共有コンピュータでの脅威を予防する手間は大きい」と説明する。
- SCTの機能について説明するマイクロソフトの衛藤氏
こうした共有コンピュータにおいては、これまで適切な管理ツールがなかったため、「サードバーティーによる有償ツールを利用するケースが多かった」と衛藤氏。そこでマイクロソフトでは、無償でWindows XPベースの共有コンピュータを管理できるツールとしてSCTを開発した。
SCTの機能としては、ユーザー制限機能やWindowsのディスク保護機能がある。具体的には、不特定多数のユーザーによるファイル変更やシステム設定ができないよう、ユーザーの機能を制限することや、プライバシー保護のためにユーザープロファイルをロックすることが可能だ。制限のかかったユーザーは、「コントロールパネル」をはじめとする設定画面へのアクセス権がないほか、「マイコンピュータ」で特定のドライブが表示されないように設定できる。
また、ハードディスクの中に保護パーティションを設け、見知らぬユーザーが新しいプログラムをダウンロードしたり設定を変更したりした場合はすべて保護パーティションに保存、PCを再起動すればその内容をクリアする機能もある。これにより、ウイルスなどの侵入を防ぐことができ、迅速なトラブルシューティングが可能となる。Windows Updateやウイルス対策ソフトなど重要なソフトの更新は、再起動してもクリアされないよう設定できる。
衛藤氏は、SCTでユーザー制限やパーティションの保護をすることで、「多層防御の一部として活用してほしい」としている。ただし、SCT単体ですべて保護しようとするのではなく、「Windows Updateの更新や、Windowsファイアウォールなどと併用し、安全な環境を確保してほしい」(衛藤氏)とした。
SCTは、特に教育市場でのニーズが高いと見込んでおり、マイクロソフトと東京都三鷹市の教育センターが協力し、同市内の小中学校への展開を目指しているという。ほかにもSCTは、公民館や図書館、空港、ホテル、インターネットカフェなどでの利用を想定している。
SCTを利用するためのシステム要件としては、Windows XP SP2(Home、Professional、TabletのいずれのEditionでも可)と、Windowsディスク保護機能のため1024Mバイト以上のディスク領域が必要だ。SCTは、12月15日にダウンロードセンターにて無償公開が予定されているほか、送料などの実費が必要となるがCD-ROM版も年内には準備される予定だ。