日本でもコンテナ型データセンター運用へ--IIJなどが実証実験、「PUE」1.2以下を目標

田中好伸(編集部)

2009-11-26 18:21

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は11月26日、冷却システムに外気を直接利用したモジュール型データセンターの実証実験を始めることを発表した。年間を通じて外気冷却のコンテナユニットによるデータセンターは国内初という。コンテナ型のモジュールによるデータセンターは米GoogleやMicrosoftなどが活用していることで、その有効性に期待が持たれている。

 実証実験はIIJのほか、東芝や日本軽金属グループのエヌ・エル・エム・エカル(NLMエカル)、能美防災、河村電機産業の4社が参加。2010年2月から1年間の運用で商用化に向けて検証する。NLMエカルがコンテナ筐体の開発、東芝が外気冷却方式の空調設備、能美防災が防災設備、河村電機産業がラックと電気設備を提供し、IIJがデータセンターの設計を担当する。

 今回のデータセンターでは、通年で外気冷却を利用することで空調設備のコストを削減、コンテナユニット採用で建屋コストを削減する。従来型より全体の設備コストを40%削減して、初期投資の軽減を狙う。

 設備をモジュール化することで建設期間の短縮が可能になる。需要に応じてオンデマンドでデータセンターを拡張できることから、クラウド環境のスケールアウトも容易になるとしている。

 既存の一般的なデータセンターは、ラック単位で利用可能な電力量を3KVA程度に抑え、熱問題の発生を回避している。今回の外気冷却ユニットでは、1ラックあたり10KVAの電力が利用できる冷却能力を備えていることから、既存のものと比べてIT機器の実装密度を約3倍にできると言う。

 データセンターの電力利用効率を示す値として「PUE」(Power Usage Effectiveness)がよく使われるが、既存の一般的なデータセンターのPUEは2程度とされる。今回の実証実験では、外気を活用することで空調の省電力化でPUE1.2以下を目指すとしている。

 今回の実験で使われる外気冷却コンテナユニットを利用した商用のデータセンターでは、消費電力40%の削減が期待でき、電気代自体もコストダウンできるとしている。商用化では、水力発電や太陽光発電など二酸化炭素(CO2)を排出しない地球環境に配慮した自然エネルギーの利用も検討していく予定だという。

 IIJはこれまで水冷式のコンテナユニットを検討してきたが、米国では水冷から、より省エネ効果の高い外気冷却へ移行が進んでいることを踏まえて、設置環境にあわせて最適な冷却方式を選択できるように、今回外気冷却方式の検証を進めることにしたとしている。

 今後IIJは、実証実験と並行して商用化を検討し、2010年4月には商用システムの構築を開始して、2011年3月にはサーバ4000台規模のデータセンターとして稼働化させることを計画している。このデータセンターを利用することで、IIJが提供するクラウドサービス「IIJ GIO」の設備コストを40%削減する。コスト競争力を高めると同時に、既存データセンターよりもCO2年間排出量を約4000トン削減できると試算する。

イメージ図 モジュール型データセンターのイメージ図

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