この1年の間、MicrosoftのクラウドOS「Windows Azure」をテストしてきた顧客や開発者は、Windows Azureの上で新しい(その多くはWeb 2.0スタイルの)アプリケーションを動かしてきた。Windows Azureでレガシーのエンタープライズアプリケーションが動かせるようになるのはいつだろうか?ユーザーはいつ、どうやって、Windows Azure技術を社内の“プライベートクラウド”で活用できるのだろうか?
Microsoftの幹部は、Azureプラットフォームの次のフェーズに関する期日を明らかにしていない。しかし、米国時間11月17日に開幕した「Professional Developers Conference(PDC)」にて、MicrosoftはWindows Azureの次のステップに関する計画の一部について語った。
Microsoftは、Windows Azureプラットフォーム(OSであるWindows Azureとデータベース「SQL Azure」を組み合わせたもの)は現時点で機能が完成している状態だ、と述べている(同社は数週間前、2010年2月1日よりAzureを有料にすると発表している)。
「(Windows Azureプラットフォームでの)当初のフォーカスは、Web 2.0顧客がこの上で開発して動かせるようにすることにあった」とWindows Azure担当シニアバイスプレジデント、Amitabh Srivastava氏は述べる。Web 2.0風アプリケーションは実装が容易だが、古いレガシーアプリケーションは通常、容易に実装できないとSrivastava氏は続ける。
MicrosoftがAzureでとる次のステップ--Microsoftは既存のものと並行して進めることになる--は、通常は複雑といわれている既存の業務アプリケーションをAzure上で動かすこと、そして顧客がAzure技術を自社データベースに実装できる(つまり、プライベートクラウドを構築する)ようにすることだ。
既存のアプリケーションをAzureで動かすにあたり、Microsoftは仮想マシン(VM)を開発者に提供する計画だ。これを利用して、開発者はレガシーアプリケーションをその内部で動かせるようになる。Srivastava氏は、提供時期や具体的にどうやって実現するのかについては触れなかった。仮想マシン内で動くアプリケーションは適応力、マルチテナントなどのクラウドの機能を完全には利用できないが、Azureプラットフォーム上で動くアプリケーションの自動クラウドバックアップなどいくつかのメリットを引き出すことはできる。
プライベートクラウド側では、MicrosoftはPDCで発表する新しい題材はあまりなかったようだ。同社は過去に、顧客内のデータセンターでAzure OSを動かすことはできないと述べている。ここでのMicrosoftのフォーカスは、顧客に「Windows Server」「SQL Server」「Exchange Server」などのソフトウェアを提供し、顧客が自社データセンターでこれらソフトウェアを動かすことにある。とはいっても、Microsoftはプライベートクラウドソリューションの配信を、Amazonや他のクラウド競合他社だけのものにするつもりはない。
「われわれがクラウドで開発した技術の多くは、顧客が社内のデータセンターでも動かしたいと思うようなものだ」とSrivastava氏も認めている(Srivastava氏は一例として、拡張性のあるクラウドストレージアプライアンスをオンプレミスで動かす機能を挙げている)。
Srivastava氏によると、Microsoftは、個人顧客向けのデータセンターコンテナの提供につながる長期的ソリューションに取り組んでいるという。これにより、クラウドは個人ユーザー向けにカスタマイズ可能となり、ユーザー自身がコンテナを自分たちで管理できるようになる。ここでも、Srivastava氏は実装に関する詳細情報や時期について明らかにせず、「Project Sydney(Microsoftが新たに発表したプライベートデータセンターとパブリッククラウド向けの接続機能)が全般的な方向性を示している」と述べるにとどまった。
Microsoftの代表者は17日の基調講演で、クラウドにおける「Systems Center」にあいまいに触れた。これは、MicrosoftがExchangeや「Office Communications Server」と同様、System Centerを自社でホスティングする計画を意味するのだろうか。Srivastava氏に聞いてみたところ、「そうではない」という答えが返ってきた。そうではなく、MicrosoftはWindows Azure管理プログラムインターフェースを公開し、System Center--それに、Hewlett-Packard(HP)の「OpenView」などサードパーティー管理製品--がAzureでホスティングされるアプリケーションを管理できるようにする、とのことだ。
Azureの次のステップのすべてが長期的方向性に基づくものではない。11月17日のセッションで、Microsoftの代表者は同クラウドプラットフォームの短期的な計画も披露している。その一例として、先日発表したWindows Azureのストレージシステムにおけるクラウドデリバリネットワーク(CDN)対応、“Windows Azure Drive”(「Xdrive」ともいわれる)もある。後者はAzure開発者が仮想マシン内にドライブを作成し、自動バックアップなどを行えるというものだ。Micrsoftは2010年1月に、Xdriveのサポートを公式に開始する予定だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ