ルイジアナ州ニューオーリンズ発--コスト効果が高いとされるVoIPが急速に普及し始め、ユーザーの固定電話離れが進む中、携帯電話業界各社もVoIPに注目し始めている。当地で開催中の「CTIA Wireless 2005」に参加している業界幹部らによると、Qualcomm、Texas Instruments、Nortel Networksをはじめとする携帯電話業界の大手各社は、自社製の携帯電話やチップ、無線通信機器にVoIP機能を搭載する準備を進めているという。
VoIPはインターネット電話サービスの土台となる技術で、VoIPサービスプロパイダのVonageや、無料インターネット電話がかけられるソフトウェアを提供するPtoPサービスプロバイダのSkypeの出現により、人気に火がついた。VoIP通話では、音声情報がデジタル化され、IP網を通じて送信される。このように音声データが(既存の電話網でなく)インターネットを経由することから、VoIP通話は現在のところ、連邦や州の規制の対象とはなっておらず、通話料の低価格化が実現されている。
大手携帯電話事業者の多くは、既に社内のネットワークでVoIPを利用して運用コストの削減を図っている。各社は今、このVoIPの機能を携帯電話端末に搭載しようとしている。時を同じくして、彼らは高い精度で高速データ伝送を可能にする無線ブロードバンドネットワークを構築中であることから、VoIP携帯電話サービスの実現が現実味を帯び始めている。
VoIPへと方針転換するQualcommとNortel
Qualcommは、次世代無線通信技術EV-DVに関する取り組みを打ち切る決定を下した。このことからも、VoIPが携帯電話業界に及ぼす影響の大きさが分かる。EV-DVは、音声通話と高速データ通信の実現を目的に設計された技術で、現在EV-DO方式を採用しているVerizon WirelessやSprintが次に採用する技術はEV-DVになると見られきた。EV-DOは、携帯電話向けに開発された、データ通信専用の技術仕様。
だが、音声通話をデータ通信として実現するVoIPを、EV-DOの最新規格であるEV-DO Revision Aでサポートすれば、音声通話は実現する。そうなれば、EV-DVの存在意義はなくなってしまう。CTIAで開催されたプレス向け発表会で、Qualcommの創業者兼CEOのIrwin Jacobsは、EV-DVの計画を棚上げにしたことを明らかにした。
「われわれはこれまで、EV-DVチップの開発を進めてきた。だが今回、開発を打ち切ることにした--将来はVoIPだ」とJacobsは述べた。
大手携帯電話機器メーカーNortel Networksも米国時間15日、EV-DO Rev. Aに対応する機器を開発するという自社の新事業戦略においてVoIPが重要な役割を果たしたと述べた。EV-DO Rev. Aではデータ伝送速度が1.8Mbps〜3.1Mbpsへと飛躍的に向上するといわれている。Nortelで無線ネットワーク事業部プレジデントを務めるRichard Loweは「この技術により、VoIPやその他の最新のマルチメディアサービスを実現できる。携帯電話事業者にとっては、同一の周波数帯域でサービスを提供できるユーザー数が増えることを意味する」と述べている。
Verizon Wirelessも、VoIP携帯電話のブームに乗ろうとしている。同社は2006年より、NortelのEV-DO Rev. A対応機器を使った試験を開始する予定だ。「米国の法人と個人の両方の顧客に優れた音声/データネットワークを提供するというわが社の理念と、EV-DO Rev. Aは合致する」とVerizon Wirelessのネットワークプランニング担当バイスプレジデントEd Salasは述べている。