Windows Vistaのベータテスターらが、同OSにセキュリティ上のリスクとなるネットワーク関連機能があることを発見した・・・ただし、彼らはこれについては心配していないと言う。
次期Windowクライアントのベータ版をインストールした一部のテスターらは、不審なネットワークトラフィックが自分のマシンに流れ込んでいることに気付いた。彼らは、攻撃の可能性を懸念し、先週このことをSANS Internet Storm Centerに報告した。
「それまで目にしたことのなかった、かなり不審なトラフィックが流れていた」とダートマス大学のInstitute for Security Technology Studiesに所属するセキュリティ専門家で、SANSにも関与するGeorge Bakosは述べている。「何らかの新しい攻撃か、われわれの気付いていない脆弱性をだれかが探しているかもしれないという懸念があった」(Bakos)
このトラフィックはインターネット上の複数のコンピュータから流れてきていたが、ベータテスターの知る限り、彼らのPCがそれらのコンピュータとデータをやりとりするはずはなかった。
だが、SANSに代わってこのトラフィックを調査したBakosが、この問題の原因を突き止めた。このトラフィックは、実はWindows Vistaに搭載されたピアツーピア(PtoP)ネットワーキング機能のしわざだった。先月リリースされたWindows VistaのBeta 1では、これがデフォルトで有効になっていたのだ。同氏によると、この機能はMicrosoftのPeer Name Resolution Protocol(PNRP)の新バージョンを使うもので、インターネットに接続されるとすぐにほかのベータマシンに接続するという。
Bakosによれば、この機能がデフォルトで有効になっていると、テスターのマシンがセキュリティ上の危険にさらされる可能性があるという。
これは、Microsoftが包括的なセキュリティ構想の一環として採用した「設計時の安全確保、デフォルト設定での安全確保、そして導入時の安全確保」の原則に違反している。この原則では、ロックをかけて機能を無効にした状態で製品を提供することが求められている。
このPtoP機能は、Windowsクライアント同士が直接接続して「PtoP群」を形成できるようにするためのもので、Microsoftではマルチプレーヤー対応ゲームなどにこの技術を応用する考えだ。ソフトウェア開発キットを利用すれば、サードパーティーのアプリケーションメーカーもこの機能を活用できる。
この機能をデフォルトで有効にすることはあらゆる面でリスクが高いとBakosは言う。同システムは、セキュリティの問題が十分に調査されていないプロトコルを使ってインターネットと接続する。また、このPtoPサービスは接続されているコンピュータのディレクトリとしても機能するため、攻撃者がターゲットを見つけ出す際に利用される可能性もある。
「不要なサービスやプロトコルが使われることで、セキュリティ上の新たなリスクが生じる。これ(PtoPサービス)の存在を認識した上で、このリスクを受け入れるかどうかを判断してほしい。このサービスを使って調べると、大量のWindows Vistaベータユーザーの情報が明らかになる」(Bakos)
さらに、プライバシーの問題を懸念するユーザーの場合、個人を特定する新たな情報がマシンと関連づけられていることに不安を覚える可能性もあると、Bakosは指摘する。このPtoPサービスがPCに新しいIDを付与するからだ。
Microsoftとしては、来年後半に出荷が予定されているWindows Vistaの正式版では、このPtoPサービスをデフォルトでは有効にするつもりはないと、WindowsプロダクトマネジャーのGreg Sullivanは説明している。つまり、この問題のリスクを抱えるのは、十分な対処が可能な技術に精通したベータテスターのマシンだけということになる。