「ユーザーを守るためには、セキュリティベンダーとの協力が欠かせない。われわれがセキュリティベンダーと情報共有する方法をいろいろ検討し、セキュリティベンダー側からのフィードバックも得た上で、Microsoftとの連携が一番いい方法だという結論に至った」。Adobe Systems 製品セキュリティ&プライバシー担当シニアディレクターのBrad Arkin氏は、8月4日に開催された同社のセキュリティへの取り組みに関するビデオ会見にて、AdobeがMicrosoft Active Protections Program(MAPP)を通じてぜい弱性情報をセキュリティベンダーに提供すると発表した件についてこう語った。
MAPPとは、Microsoftがセキュリティプロバイダ向けに提供しているプログラムで、同プログラムに参加しているセキュリティプロバイダは、Microsoftが月例で配布するセキュリティアップデート以前にぜい弱性情報が入手できる。MAPPのパートナーとなっているセキュリティプロバイダは65社で、全世界で10億人のユーザーをカバー。MicrosoftではMAPPを通じて攻撃の窓口を最大75%削減したとしている。
Adobeでは、同様のプログラムを独自に提供しようとしていたが、「新たにプログラムを作るより、すでに成功事例を持つMicrosoftと連携し、同プログラムを通じてセキュリティ情報を提供した方がいいと判断した」とArkin氏。Microsoft製品のユーザーの多くはAdobe製品のユーザーでもあることから、同プログラムでセキュリティプロバイダにアプローチすることが効率的だという判断のようだ。
ビデオ会見にてArkin氏は、Adobe Reader次期メジャーリリースにて実装予定のサンドボックス機能についても説明した。
サンドボックス機能は、Windows向けのAdobe Readerに実装され、その名称は「Protected Mode」となる。保護された環境でアプリケーションを実行するために、ファイルのインストールや削除、システム情報の改変ができなくなるというものだ。Arkin氏によるとこの機能は、「MicrosoftのPractical Windows Sandboxing技術がベースになっており、Microsoft Office 2010のProtected Viewや2007のMOICE(Microsoft Office Isolated Conversion Environment)、Google Chromeのサンドボックスも同じ技術をベースとしている」という。
同機能が実装されても、「ユーザビリティなどに影響はない」とArkin氏。事前に検証したケースでも、ユーザーの95%はサンドボックスの存在に気づかなかったという。ただし例外として、Windows XP上では、視覚に障害のあるユーザーに向けたスクリーンリーダーというコンテンツ読み上げ機能が利用できないとしている(Windows Vista、Windows 7では利用可能)。
Adobe Reader Protected Modeの初回リリースではまず、すべての書き込みコールをサンドボックス化する。これにより、PCに不正コードをインストールしたりその他の方法でPCのファイルシステムを改変するといった攻撃リスクを軽減する。また、将来的には読み込みもサンドボックス化し、PCから機密情報を読み出そうとする攻撃も防ぐという。
「Protected Modeでは、不正なコードをサンドボックス内にあるPDFファイルに隔離し、システムにコードがインストールされることを防ぐため、防御性能がいっそう向上する」とArkin氏。同氏によると、フィッシングやクリックジャックなどの攻撃はサンドボックスでは防げないものの、「バッファオーバーフローなどメモリに不正侵入するコードの攻撃は、既知のものであればすべて防ぐことが可能」としている。