「Xen」は、複数のOSを同じコンピュータ上で動かせるようにするソフトウェアだが、まもなく登場する新バージョンでは、マルチプロセッサをサポートすることになる。その結果、同ソフトウェアの性能は大幅に強化されることになりそうだ。
Xenは、「ハイパーバイザー」とよばれるソフトウェアのレイヤで、プロセッサやメモリといったコンピュータ資源の各OSへの割り当てを管理する。しかし現行のバージョンでは、どのOSもプロセッサを1基しか使えないことが足かせとなっている。
Xenのバージョン3ではこの制限がなくなると、同プロジェクトのリードプログラマー、Ian Prattは述べている。同氏はこのプロジェクトを立ち上げた人物であり、その商用化を目指すXenSourceという企業の創設者でもある。同プロジェクトでは、今月中にもバージョン3のテストを開始したいと考えている。Prattは、「バージョン3.0.0は8月、あるいは準備さえ整えばもっと早く出したい」としたが、ただし「リリースはスケジュールよりも品質を優先するのが信念だ」と慎重な構えを見せている。
Illuminataのアナリスト、Gordon Haffによると、マルチプロセッサをサポートすることは重要だという。「一部のアプリケーションは、明らかに複数のプロセッサを必要としている」(Haff)
1台のマシンで複数のOSを同時に走らせる機能は、Unixサーバやメインフレームでは何年も前から実装されていたものだが、これにはいくつかのメリットがある。まず、こうした機能を使えば、1台のサーバ上で複数のタスクを簡単に処理できるようになることから、マシン1台で数台分の作業をこなせるようになる。また、1台のマシンを複数のドメインに分割し、各ドメインを業務用途、個人用途、システム管理用途というように使い分ければ、相互に干渉しあうこともなくなる。Intelは今年、またAdvanced Micro Devices(AMD)でも来年に、各々のプロセッサに仮想化機能を持たせる予定であり、それを受けてマルチOSの利用が一気に進む可能性もある。
Xenに対しては、すでにIntel、IBM、AMD、Hewlett-Packard(HP)、Sun Microsystems、Red Hat、Novellの各社が積極的な支援を表明している。Xenのソフトウェアを使えば、コンピュータ資源を仮想化した上で、複数の「バーチャルマシン」をつくり出し、そのなかで別々のOSを動かせるようになる。
しかし、Xenにはいくつかの競合技術が存在する。EMCの子会社VMwareは、何年も前から同様の技術を開発している。同社では、すでに2基の物理プロセッサを利用するバーチャルマシンをサポートし、また2005年末までには4基のプロセッサをサポートすることになっている。また、Microsoftもハイパーバイザーの自社開発に取り組んでおり、こちらは2007年に出荷されると見られている。
もう1つ、IBMの「rHype(Research Hypervisor)」という技術も、Xenの強力なライバルになる可能性があった。しかし、同社のあるプログラマはこのプロジェクト--少なくともIntelチップに対応するバージョンの開発プロジェクトについて、それがほぼデモの目的だけで行われたものであるとし、他のメンバーに対してXenを利用するようアドバイスしていた。