売上増大を目指すBEA Systemsが、同社がこれまで顧客対象としていた技術者以外のユーザーを取り込もうとしている。
BEAの「AquaLogic」製品ファミリー担当チーフアーキテクトであるPaul Patrick氏によると、インフラストラクチャソフトウェアを提供する同社は2006年内に、技術に詳しい企業経営者やシステムアーキテクトに向けたツールを発表する予定だという。
これまでハイエンドなJavaプログラマを対象としてきたBEAにとって、これは明らかな方針転換である。現在は、ビジネスアプリケーションを記述したり稼働させたりするのに用いるJavaサーバミドルウェアおよびツールが、同社の主な収入源となっている。
BEAは、AquaLogic製品ラインの中でも特に「Composer」ツールを、技術に詳しいビジネスアナリストやシステムの設計に当たるエンタープライズアーキテクトといった新たな顧客層に提供していく意向だ。
BEAの新戦略には、大企業の技術投資に関して最近起こっている変化が反映されている。今日では、IT部門が技術の購入を決定する際に、経営陣がその選択に口を挟むことが多くなりつつあり、技術投資に充てるIT予算に対して大きな影響力を行使し始めているのである。
「かつてはIT部門が予算の配分を行っていた。だが現在は、経営陣がITに割く資金を決定している。経営者たちが社内に変化をもたらしつつある」(Patrick氏)
新たに技術投資の決定権を握るようになった人々を顧客対象とするという戦略は、他のソフトウェアメーカーでも積極的に採用されている。
例えばMicrosoftは、最高経営責任者(CEO)やそのほかの「ビジネスリーダー」を明確な対象としたマーケティングキャンペーンを立ち上げた。開発者向けの「Visual Studio Team System」といったツールでさえも、プロジェクトマネージャーや最高技術責任者(CIO)らが使用するポートフォリオ管理ソフトウェアと関連づけて設計されるようになっている。
IBMもまた、技術系およびビジネス系双方の責任者を顧客対象とするようになり、アウトソーシングサービスの収益を拡大しようと、ビジネスコンサルティング部門への投資を行っている。
BEAの幹部は、同社が顧客対象を広げた製品ラインの売り上げは好調だと話している。同社の2005年の売り上げは落ち込んでいたが、最近になって上昇気配が見られるようになり、こうした製品ラインの発表によって、さらなる増収が図られていくことになる。
しかしアナリストらは、新たな製品ラインを打ち出したからといって、Microsoft、IBM、Oracle、SAPなどの大企業や、JBossをはじめとするオープンソース新興企業との競争と無縁でいられるわけではないと指摘している。ミドルウェアソフトウェアを提供しているこれらの企業は、先進的でモジュラー化されたシステム設計の手法であるサービス指向アーキテクチャ(SOA)へ企業が移行していくための予算をめぐって、熾烈な戦いを繰り広げている。