11月22日に開催された第5回 北東アジアOSS推進フォーラム in 福岡の基調講演では、日本、中国、韓国の3カ国の代表が、各国のオープンソースソフトウェア(OSS)の現状を踏まえた活動状況を語った。ここでは、中国と韓国の基調講演を紹介する。
国産ベンダーを中心にLinuxが成長
中国代表として講演に立ったのは、中国OSS推進連盟 主席のShouqun Lu氏だ。Lu氏はまず、Linuxが中国で高い伸びを示しており、2005年は年率で81%成長したことについて触れた。Linuxベンダーの中では、やはり中国国産ベンダーとなるRed Flag Softwareが32.1%と高いシェアを握っている。
Lu氏はOSSのトレンドとして、OSのLinux、ウェブサーバのApache、データベースのMySQL、スクリプト言語のPerl、PHP、Pythonの頭文字を取った「LAMP」フレームワークが注目されつつあると話す。また、LAMPに対抗したJ2EEベースの「POJO」(Plain Old Java Object)や、Windows OSとオープンソースのアプリケーションを組み合わせた「WAMP」(LAMPのLinuxがWindowsになったもの)も登場していることを指摘した。
一方、中国でのLAMPの応用についてLu氏は、「Apacheの利用が不十分だ」と述べる。ウェブサーバ全体のApacheのシェアが約70%と非常に高い中、中国におけるApacheのシェアは18%に満たないためだ。また、PHPアプリケーションについても、「プログラマーが不足している」と述べる。こうしたことからLAMPの採用率は高くなく、「全体の10%から20%にとどまっている。中国でのLAMPの採用はまだ始まったばかりだ」とLu氏は話す。
ただし、OSSの教育やトレーニングはすでに始まっている。大学や研修センターなどの公的機関にてOSSを教える場所はすでに全国40カ所を上回り、民間主導で大学などのコースを提供するケースも200を超える。
Lu氏は、「OSSに関して、今中国はまさに転換期を迎えている」と話す。これまでインフラが整っていなかったことに加え、OSSの理念や概念に対する理解も不十分だったが、こうした時代を脱し、「閉鎖的な開発方式から、少しずつオープンで協力的な開発環境になじんできている」とLu氏。今後はいかにOSSの本質を生かしつつ、ビジネスモデルの構築を考える時期だとしている。
条件が同じであればOSSを
韓国の代表として基調講演に登場したのは、韓国OSS推進フォーラム 会長のKern Koh氏だ。
Koh氏も、韓国におけるLinuxのシェアについて語った。Koh氏はIDCのデータから、韓国では2004年のサーバ市場でLinuxのシェアが18.48%だったが、2005年には24.5%にまで成長したことを指摘する。Koh氏は、「世界全体でのLinuxのシェアは20%であることから、韓国では世界のトレンドよりLinuxの普及が進んでいる」とアピールする。
ただし、Koh氏も「デスクトップ分野は課題が多い」と述べる。デスクトップでのLinuxの普及は1%にも満たないためだ。この分野においては「日中韓3カ国の協力がより必要とされる」としている。
韓国全体のOSSの発展の課題としてKoh氏は、「世界のトレンドよりも遅れている」と話す。そのため、「市場形成、技術力の向上、環境の改善という3つの視点から、課題を解決する努力を続ける」とKoh氏。
Koh氏によると、韓国ではOSSの市場形成に向けた実証実験を、自治体や大学、医療機関、軍隊などさまざまな業界で行っているという。また、公共機関のIT化を進める際には、「計画段階でまずオープンスタンダードとオープンプラットフォームを導入して互換性を確保するようにし、RFP段階でベンダーが偏らないようにする。また評価段階では、すべての条件が同じであればOSSを優先的に選択するようにしている」と述べ、政府を中心にOSSを推進していることを強調した。