人気の高いウェブブラウザ「Firefox」を開発しているMozilla Foundationさえも、ブラウザ以外の分野への参入を考えているようだ。
Mozillaの開発者らは米国時間10月25日、「Prism」という名のプロジェクトを発表した。Prismとその他の「実験」により、ウェブアプリケーションをさらにデスクトッププログラムに近いものにする予定である。
Prismの目的は、ユーザーが好みのウェブアプリケーションを自分のデスクトップOSに統合できるようにすることである。
例えば、「Mac OS」や「Windows」のアプリケーションメニューからウェブベースのプログラム「Gmail」や「Facebook」にアクセスすることが可能となる。また、デスクトップ上にFacebookのアイコンを作成し、そのウィンドウ内で起動することができるようになる。
Prismは、ウェブ技術を用いてデスクトップアプリケーションを作成するためのソフトウェアである「Adobe Integrated Runtime(AIR)」のオープンソース版である。AIRはバージョン1.0が2008年前半にリリースされる予定である。既にAIRを利用するアプリケーションがいくつか開発されている。
Mozilla Labsは、ウェブアプリケーションの世界をデスクトップOSに統合させようとしている。ユーザーのウェブアプリケーションの利用は高まっているものの、それらはまだデスクトップアプリケーションとはあまりうまく統合されていないからである。
Mozilla Labsの25日のブログ投稿での発表によると、「ユーザーは主にデスクトップアプリケーションを対象に従来は作業していたが、現在ではウェブアプリケーションの利用がますます増加している。しかしウェブアプリケーションは、ウェブブラウザのドキュメント中心のインターフェースにはうまく適合していないことが多い」という。
Mozillaでは現在、Windows上で動作するPrismのプロトタイプが完成しており、MacとLinuxの初期版を開発中であるという。
将来的には、「Firefox 3」によるオフライン情報アクセスや3次元グラフィックスが搭載される予定である。
Adobe、「プロプライエタリ」に対する批判に反論
最終的な目標は、開発者らに、既存のウェブ開発技術を用いて、Prismを利用したアプリケーションを作成してもらうことである。Adobe AIRも、開発者らが標準的なウェブ開発ツールを用いてAIR上で動作するプログラムを作成できるようにする。
Firefox 3を開発中のユーザーエクスペリエンスデザイナーAlex Faaborg氏は、「Prismにより、ウェブ上の斬新で革新的なアプリケーションを、そのアプリケーションの作成者が追加で何かを開発することなく、ユーザーのデスクトップ環境に統合することができるようになる」と記している。
Mozilla Labsは、AdobeのAIRがプロプライエタリでソースが非公開であるのに対し、Prismはオープンソースソフトウェアであるという事実を強調している。
Adobeのデベロッパーリレーションズ担当シニアマネージャーであるMike Chambers氏は、MozillaのAIRに対する評価に反論し、PrismはAIRとどこが異なるのかと疑問を投げかけている。
Chambers氏は自身のブログの中で、「私が奇妙に感じるのは、Mozillaは、(大変優れた製品である)Adobe AIRに非常に類似したものを開発しているようであるのに、Mozillaが開発するとそれは本質的に善であり、Adobeが開発すると本質的に悪であるとみなされている点である」と記している。
AdobeのチーフソフトウェアアーキテクトであるKevin Lynch氏は、2007年10月に開催されたAdobeのMaxカンファレンスにおいて、AIRに似たものを誰かが開発するだろうと期待していると述べていた。Lynch氏は、「AIRは、主導的な製品になると早い時期に位置付けられると考えている(中略)Flashが主要な対話型マルチメディア製品と早い時期に位置づけられていたように」と述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ