「ここまで悔しいとは思わなかった」--ありったけの力を出し切って臨んだ学生向け世界技術大会「Imagine Cup 2008」で、残念ながら準決勝進出を逃した日本代表チーム「NISLab」。準決勝に進む12チームが発表された瞬間、ある者は涙をこらえ、ある者は悔しさで肩を震わせた。日本からの報道陣や関係者も、彼らのこれまでの努力や短期間での急成長、そして上位チームに引けを取らないプレゼンテーションを見ていただけにがく然とした。「よくがんばったよ」と声をかけても、今の彼らの耳には届かない。NISLabの4人は今、人生最大の悔しさを味わっているのだ。黙ってその場を去る4人を、そっと見送るほかなかった。
審査員を前にプレゼンテーションするNISLab。右から、松下知明氏、中島伸詞氏、加藤宏樹氏、前山晋哉氏。シャツとネクタイは、日本代表を勝ち取った賞金で買ったものだ。NISLabのメンバーは、松下知明氏、中島伸詞氏、加藤宏樹氏、前山晋哉氏の4人。同志社大学 理工学部 情報システムデザイン学科 専任講師の小板隆浩氏の下で学ぶ、学部生と院生の集まりだ。彼らの開発した「ECOGRID」は、家電を制御して消費電力を削減すると同時に、ネットワーク経由で世界中の家庭をつなぎ、電力削減のナレッジを共有するというシステム。4人は、リーダーでビデオ担当の松下氏、インターフェース担当の中島氏、ハードウェアとの連係を担当する加藤氏、英語が得意でプレゼンテーションを担当する前山氏と、うまく役割分担をした上でプロジェクトを進めた。参戦を決めてから日本代表に選ばれるまでの期間はもちろん、4月下旬に日本代表に選ばれてからはそれまで以上にミーティングと徹夜を重ね、世界大会に挑んだ。
パリ到着後も、彼らは本番直前まで念入りに準備した。同行した小板氏も含め、狭いホテルの1室に全員集まって何度も練習を繰り返した。プレゼンテーションは2日に渡って2回、異なる審査員の下で行われる。いよいよ本番、あとは自分たちの力を出し切るまでだ。
ぎりぎりまでメンバーに指示を与える小板氏(左端)1日目。審査員の反応は悪くない。笑顔でうなずきつつプレゼンテーションを聞く審査員もいる。ところが、実際のデモの段階になって無線LANがつながらない。部屋に人がいないことを感知して家電が自動的にスイッチを切るというデモのため、わざわざ日本からランプやヒーターなどを持参したのだ。この荷物を無駄にしないためにも、デモは成功させたかった。デモ担当の加藤氏は、「以前はネットワークの不調を想定してUSBを用意していたのに、ずっと調子が良い環境にいたため今回に限って用意していなかった」と悔やむ。仕方なく、デモの様子を撮影したビデオを流すことでその場を乗り切った。
2日目。今日の審査員は表情が硬い。審査員も大量の発表を見て疲れているのか。しかし、前山氏は緊張のかけらも見せることなくプレゼンテーションを進めた。回線も事前にチェックしており、今日こそデモが披露できる。ところが…… ここでもデモは作動しなかった。ネットワークにはつながっている。原因不明のエラーだった。結局2日目もビデオでデモの様子を見せるしかなかった。「あれほど何度も練習したのに……」加藤氏の心の叫びが聞こえるようだった。
それでも、プレゼンテーションそのものは無事終了した。「システム構成図を見せてほしい」と審査員から要求された時も、運良く事前に図を用意していたため即座に対応できた。「お年寄りには使いにくいのではないか?」という思いもよらぬ指摘に対しても、「今は各機器を個別に操作しているが、システムを1つにまとめることもできるので、そうすれば使いやすい」と、うまく切り抜けた。あとは結果を待つのみだ。
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