マイクロソフトは10月19日、次期OSの「Windows 7」におけるアクセシビリティ機能について説明会を開催した。アクセシビリティ機能とは、障害のある人や高齢者がより簡単にPCを使いやすくするための機能のことだ。
マイクロソフトの最高技術責任者である加治佐俊一氏は、社会を取り巻く状況として、「2013年には4人に1人が65歳以上になるとされており、超高齢社会が到来する中、コミュニケーションの手法としてPCは重要な役割を果たす。また、障害のある人が社会に参画するにあたっても、PCの利用は避けて通れない」と述べ、PCのアクセシビリティ機能の重要性を述べた。
同社がWindows 7にて拡張したアクセシビリティ機能の代表的なものとしては、「コンピュータの簡単操作センター」「拡大鏡機能」「スクリーンキボード」「デスクトップ環境の快適化」などだ。
コンピュータの簡単操作センターとは、PCを使いやすくするための機能を1カ所に集約したものだ。目的別に「画面を見やすくしたい」、「キーボードを使いやすくしたい」といったように設定されている。拡大鏡機能は、Windows 7のどの画面からでもWindowsロゴキーと「+」キーのキーボードショートカットで拡大鏡が起動できる機能だ。
また、スクリーンキボードとして、大きさが変更できる画面上のキーボードを搭載、タッチ機能にも対応した。さらに、快適なデスクトップ環境を提供するため、マウスやキーボードの操作が難しい人でも少ない操作でアプリケーションの起動やウィンドウの操作ができるような新機能や新キーボードショートカットを用意した。
マイクロソフトでは、障害のある人や高齢者に向けてPCの支援技術を提供する企業や団体とも連携している。この連携は、「Microsoft Assistive Technology Vendor Program(MATvp)」(マイクロソフト支援技術ベンダープログラム)と呼ばれており、Windows Vista発売時に発足した全世界で展開するプログラムだ。マイクロソフト コマーシャルWindows本部 本部長の中川哲氏は、「Vista発売時には国内でのパートナー数は9だったが、現在では25になった」としている。
MATvpのメンバーの中で、10月22日のWindows 7発売日にあわせて対応製品を出荷するのは、クリエートシステム開発(用意している製品は、音声合成および認識プログラムの「ドキュメントトーカ」)、高知システム開発(画像情報読み上げソフトウェア「PC-Talker」)、JOHNAN(遊んで学べるソフトやスイッチ「ぽんぽんらんど」シリーズ)、スカイフィッシュ(画像情報読み上げソフトウェア「FocusTalk」)、有限会社ストラトゲイト(直交ローラー操作方式マウス「かおマウス」)、「できマウス。」プロジェクト(体の残存機能を活用したPC操作をするための機器やソフト)、テクノツール(「あいうえおキーボード」「小型ひらがなボード」など)の7パートナー。ほかにも5つのパートナーが2009年中にWindows 7対応の製品を提供する予定だ。
このほかにもマイクロソフトでは、障害のある人を支援する人や高齢者を対象としたWindows 7のハンズオンセミナーを開催するほか、Windows 7のアクセシビリティ機能についてまとめた「アクセシビリティ ガイドブック」を同社サイトより無償でダウンロードできるようにした。
また、Windows 7に搭載された視覚に障害がある人のための音声読み上げソフト「ナレーター」機能で利用できる日本語の音声合成エンジンを、視覚に障害がある人やそのような人をサポートする人に対し無償で提供する。さらに、視覚に障害があり、音声読み上げソフトのみでWindows 7を利用する人を対象に、社会福祉法人 日本盲人職能開発センターとの協力で作成した「視覚障碍者向け Windows 7 簡易マニュアル」も用意した。
加治佐氏は、「マイクロソフトは製品開発において社会的責任がある」と述べ、「製品に最先端技術を搭載することも大切だが、同様に誰もが使えるアクセシビリティ機能を開発することも重要だ」とした。