日本インフォア・グローバル・ソリューションズ(インフォア)は11月6日、国際会計基準(IFRS)に対応したコンポーネント「Infor Advanced General Ledger(AGL)」を発表した。出荷開始は2010年2月末を予定している。
AGLは、インフォアのサービス指向アーキテクチャ(SOA)戦略である「Infor Open SOA」のコンポーネントであり、既存の会計システムに“複数元帳”機能を追加する。複数元帳とは、複数の会計基準の総勘定元帳を会計システムにあらかじめ設定しておいて、各国で発生する取引からの仕訳をそれぞれの元帳に記帳する仕組みを指している。
早ければ2015年にも国内での適用が始まる見込みのIFRSでは、海外拠点ごとの税務基準ベースの報告に加えて、IFRS向けの連結ベースでの報告を行う必要がある。つまり、IFRSは“二重帳簿”を前提としている。
たとえば、米国にある子会社が取引を行うと、その仕訳データは、米国子会社の元帳に記帳すると同時に、日本本社の元帳にも記帳しなければならない。1つの会計データから複数の会計データを自動生成する機能(これが複数元帳機能)に対する需要が急速に高まっていると見られている。
現在使われている統合基幹業務システム(ERP)の会計モジュールや会計パッケージシステムの中には、そうした複数元帳を管理する機能が組み込まれていることもある。しかし、異なる元帳への自動転記や勘定科目コードの自動組み替えがサポートされていないことから、ユーザー企業への負担が大きくなっているという課題も同時に存在している。
AGLは、こうした課題を解決するために、勘定科目体系や会計期間、通貨の異なる複数の会計元帳を定義、1つの会計データから複数の会計データを自動生成して、それぞれの元帳に保持する機能を提供する。既存の会計システムを修正しなくても、IFRSに短期間で柔軟に対応できるとインフォアは説明している。
またAGLは、仕訳明細ごとに最大で30種類の分析用コードを保持可能となっているという。この機能を活用して仕訳データを分類、集計することで、IFRSを適用する企業でのさまざまなセグメント分析ニーズへの対応も可能だとしている。既存のERP会計モジュールや会計パッケージシステムの場合、分析用コードは10〜20までとされており、使いにくいという意見もある。
AGLは、Open SOAのビジネスイベント連携コンポーネント「Infor On-Ramp」を活用することで、インフォアの会計管理システム「Infor SunSystems」やERPパッケージ「Infor ERP」シリーズだけでなく、他社製の会計パッケージやERPと連携して使用することもできる。この点から、既存の会計システムとの機能的な重複が少なく、低い総所有コスト(TCO)で導入できるとしている。
価格は、Infor製品の既存ユーザーであれば、ライセンス、保守契約の範囲内で無償で提供される。もし、Infor製品以外との接続を希望する際には、導入費用などを含めて個別見積になるとしている。インフォアは、グローバルに複数の拠点を持つ、さまざまな規模の企業に対して、AGLを提供してIFRS適用時の負荷を支援していくいう。
インフォアのインダストリー・ソリューション・ビジネスコンサルティング本部執行役員の笹俊文氏は、「IFRS対応では、会計システムだけではなく、そのほかのシステムや会計基準、ルールなどの見直しが必要であり、相当の準備期間が予想される。グループの経理システムの構築とIFRSの対応準備は同時並行で進めるべき」と強調している。
IFRSの対応を財務会計と管理会計で分けて考えると、財務会計ではマスタ標準や組織体制が影響を受けるだけでなく、会計のプロセス自体も影響を受けることになる。「マネジメントアプローチ」の採用があるからだ。
マネジメントアプローチは、経営層がグループ内部の経営管理で活用しているセグメントなどの情報を財務会計として公開するものだ。つまり会計のプロセス自体を、現在の財務会計と管理会計を一致させるように変えていくことが求められる。