サンフランシスコ発--その前宣伝を聞いた聴衆は、聖ダニエルがライオンの巣に飛びこもうとする場面のような状況を予想していた。だが実際に聴衆が聞いたのは、子ども向け番組の司会進行役の話術がちりばめられた内容だった。
Microsoftの法律顧問Brad Smith氏は、同社が開発者コミュニティとの関係で新しい幕開けをする準備ができていると説明するため、午後の基調講演に集まったオープンソース推進派の前に登場した。
オープンソース推進派や企業幹部で満員の会場で、Smith氏は「1つの部屋にエンジニアが2人集まれば、1000人の弁護士よりもはるかにうまく問題を解決できる」と語りかけ、Microsoftは「会話と対話」を求めていると付け加えた。
「われわれは、業界で異なる立場の人々が協力できるようにする架け橋を構築することの重要性を信じている」とSmith氏は語った。「われわれが考える架け橋とは、スケーラブルで、役に立ち、費用も手ごろなものだ。そうした橋を作るのは難しい。しかし、私が言いたいのは、今こそわれわれが本当に構築する必要のある橋だということだ」
米国時間3月25日に開催された「Open Source Business Conference」における基調講演で、もう1つの注目すべきポイントとして、Smith氏は、Microsoftが「この業界でオープンソースソフトウェアが担う重要な役割」に感謝しており、オープンソースソフトウェア制作者の情熱に敬意を抱いていると述べた。「これはいつもわれわれから聞く内容ではないだろうし、そのことは私も認識している」
「われわれは全員ソフトウェアを手がけている。われわれは同じ業界の一部、多種多様な部分からなる同じ業界の一部なのだ」(Smith氏)
懐柔的な言い回しにもかかわらず、Microsoftの知的財産を保護する点に関して、Smith氏に遠慮がちな様子はない。2007年5月、同氏は「Fortune」誌に対し、無料のオープンソースソフトウェアがMicrosoftの235件の特許を侵害していると発言した。Smith氏はこの時、Linuxカーネルが42件の特許を、ユーザーインターフェースとその他のデザインエレメントでさらに65件の侵害があるとFortune誌に述べた。同誌の報道によると、OpenOffice.orgは45件の特許を、他のフリーソフトウェアやオープンソースプログラムも83件の特許を侵害しているとMicrosoftは主張しているという。
では、その後の10カ月の間に何が変わったのだろうか。実は、多くのことが変わっている。
とりわけ変化したのは、オープンソースソフトウェアがコンピュータ業界に深く根付き、Microsoftの顧客の多くもさまざまなオープンソースソフトウェアを使うようになったという点だ。それでもなお、Microsoftはメッセージを伝えるためにこのカンファレンスにやって来た。同日行われたパネルディスカッションでは、Microsoftの「オープンソースおよびLinux戦略担当ディレクター」を務めるSam Ramji氏が満面の笑みを浮かべて、歓迎ムード全開で3人のオープンソース企業幹部らと語り合っていた。