データ活用のカギは「非構造化データ」の効率的な管理
企業がビジネス課題を解決するにあたり、多様な「データ」を活用することは、必須のスキルとなっている。特に近年、ビジネスや消費行動を含む、社会的な活動全般とITとの関わりが深くなっている中で、企業が活用すべきデータの「量」と「種類」は爆発的な勢いで増えている。
かつては、業務システムなどが生みだす定型的なトランザクションデータを、RDBMS上で管理し、それを必要に応じてデータウェアハウス（DWH）のようなアプローチで集計・分析することが、企業における「情報活用」の大部分を占めていた。しかし、業務や一般社会におけるITの活用範囲が広がるにつれ、企業内外に存在するデジタルデータの種類は増し、従来のアプローチだけでは、それらを単純に管理することさえ、難しくなってしまった。
例を挙げれば、広く普及したスマートフォンやモバイルPCを通じて、日々大量のテキストデータ、画像データ、音声データ、ビデオデータが生みだされ、それらは電子メール、Webサイト、ブログ、ソーシャルネットワークサービス（SNS）といったツールを通じて、驚くべきスピードで共有されるようになった。さらには、ネットに接続されたカメラや各種センサなどからも、リアルタイムの状況を示したデータが次々と生みだされ、蓄積されている。こうした状況は、あらゆるビジネスの世界に、無視できない影響を与えつつある。
通常のRDBMSが扱いを得意とする、定型的なトランザクションデータ（数値データ）などは、一般に「構造化データ」と呼ばれる。一方で、ビジネス文書やメール、SNSへの投稿のようなテキストデータ、画像、音声、映像といったメディアデータなどは「非構造化データ」と呼ばれている。現在、世界的に急速な勢いで総量を増やしているのは、特に後者の「非構造化データ」である。
近い将来、企業内に存在しているデータのうち、データベース上で管理される構造化データは10％程度に過ぎなくなるという調査予測がある。残り90％の非構造化データは、多くの場合、データの種類ごと、または企業の部署単位などでサイロ状に管理されており、他の種類のデータや、構造化データなどと合わせた管理や分析が難しい状態に置かれているという。
企業が、社内外に存在する多様なデータを効率的に活用し、そこから成果を生みだすためには、構造化データ、非構造化データを問わず、それらのすべてを統合的、かつリアルタイムに管理・分析できる信頼性の高い基盤が必要となる。こうした「情報管理基盤」の重要性は、企業があらゆるデータを活用して、そこから新たな価値と競争力を生みだそうという近年の「ビッグデータ」のムーブメントの中で、改めて増しているとも言える。
非構造化データの管理・分析で実績を誇る「HP IDOL」
日本ヒューレット・パッカード（HP）では、こうした構造化データと非構造化データ（同社では「ヒューマンインフォメーション」と呼ぶ）を統合的に扱う「情報最適化プラットフォーム」として「HP IDOL(HP Intelligent Data Operation Layer)」を提供している。
「IDOL」は多様な非構造化データの検索、分析、可視化を実現する技術であり、世界各国の官公庁、インテリジェンスそして金融、製薬、通信など様々な組織や企業で導入されてきた。
現在では、同じくHPが提供する、主に構造化データの分析を得意とする「Vertica Analytics Platform」との統合や、さまざまなサイロ化されたデータストアと接続するためのコネクタの開発も進められている。「IDOL」は、社内外に存在するあらゆるデータストアへアクセスできる、単一処理レイヤとしての機能も提供する。
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IDOL自体は長い歴史を持った製品であり、実績も数多い。特に「非構造化データ」分析での特長的な事例としては、英ハル市での「映像分析システム」が挙げられるだろう。このシステムでは、市内に設置された多数の監視カメラの映像に対してリアルタイムで分析を行う。万が一映像の中に「不正行為の兆候」が見られた場合、システムが自動的に担当者へ通知を行うという。リアルタイムの映像データを、迅速な容疑者の逮捕へとつなげることと合わせて、映像履歴の蓄積から、犯罪パターンや危険地帯などの分析、犯罪の未然防止策の策定などにも活用を進めているという。
また、ロンドン警視庁では、2012年夏のロンドンオリンピック開催に合わせて、市内における警備オペレーションの効率化を図るシステムをIDOLで構築した。これは、「暴動」や「犯罪」の発生と、SNSで発信されるテキストや画像といったデータとの関係性を分析するものだ。
さらに、米国のモータースポーツ統括団体であるNASCARは、レース興行業の活性化を目的とした情報分析のプラットフォームをIDOLで構築している。このプラットフォーム上で、ソーシャルメディアをはじめとする社外データや、社内のデータベース上のデータを統合的に管理し、あらゆるタイプのデータの効率的な検索を実現しているという。さらに、ファンやメディアと効果的にコミュニケーションできる情報発信を行うため、ソーシャルメディア上での「話題」の盛り上がり方を可視化することなどにも取り組んでいるという。
さまざまな事例を持つ「HP IDOL」だが、日本HPでは、多彩な事例から蓄積されたノウハウを元に、ワークショップやアセスメントを通じて、ユーザーに最適なユースケースと導入プラン、導入サポートを提供する「HPビッグデータディスカバリーエクスペリエンスサービス」も実施している。新規の取り組みに対するリスクを軽減しつつ、データ分析に基づいたビジネス課題解決を図りたいと考えている企業にとって、製品と合わせて、利用価値の高いサービスではないだろうか。
