「BusinessWeek」誌の9月12日号に「Oracle Has Customers Over a Barrel(顧客を苦しめるオラクル)」と題する記事が掲載された(タイトル訳は筆者)。これは、Oracleをはじめとするソフトウェア企業が、買収を通じて巨大化することで、顧客に対してプラスではなくむしろマイナスの効果をもたらしているのではないか、という問題意識を投げかけるものである。
記事によれば、Oracleは過去4年間に$30billion (約2.7兆円)を投じて56社を買収してきた。最も新しいディールは、もちろんSun Microsystemsへ仕掛けているものである。しかし、Oracleだけが飛び抜けているわけではない。
同誌によれば、同時期にMicrosoftは79社、IBMは60社、EMCは40社、HPは34社の買収を行っている。メディアでは目立つものだけが大きく取り上げられるので、数字を見せられると、その規模には改めて驚かされる。
記事ではリテール業者のCIOの言葉として次のように引用している。
"Once you've made a deal with the devil, it's hard to get away."
この言葉は、少数の大手ソフトウェアベンダーが市場を寡占するようになり、かつ相手があまりにも巨大であるため、そのスイッチングコストの高さから身動きが取れなくなる状況を揶揄している。
記事では、ソフトウェア需要の低迷にも関わらず、Oracleが過去数年間にわたり価格を上げてきたことが指摘されている。また、Sunの買収にはOracleの競合製品であるMySQLが含まれるように、ソフトウェア企業の巨大化は顧客企業の選択肢を減少させ、市場からイノベーションを排除する懸念が指摘されている。
しかし、こうしたソフトウェア企業の巨大化とそれに伴う価格統制力の強化は、ソフトウェア企業が健全な経営を行うための戦略でもある。
たとえば、ソフトウェアビジネスの重要な顧客セクターである金融業界は、業界の効率化のために巨大化の一途を辿ってきた過去がある。その巨大なバイヤーパワーに対抗しようと思えば、ソフトウェア業界が細分化されていては到底太刀打ちすることはできない。巨大化することは、サプライヤーパワーをマッチさせ、バイヤーとのバランスの取れた取引関係構築を可能とする。
また、巨大化することが顧客に対するソリューションという考え方もある。Oracleは買収したソフトウェア群を連携させるための基盤として「Fusion Middleware」の開発を行っているが、これは従来、顧客企業が多大なエネルギーを費やさねばならなかったシステムインテグレーションの労力を減少させる。
ソフトウェア同士のインテグレーションは、通信のみが行えるようになったとしても容易に解決するものではない。別々の会社から提供されるソフトウェアは、相互に相手の領域への進出を伺う関係にあり、それらを機能面での整合性を取りながらインテグレーションするのは容易ではない。
それに対し、一つのソフトウェア企業が主要なソフトウェア群を網羅し、相互に矛盾がないようにそれら製品のコンセプトを揃え、製品間の連携基盤を提供すれば、こうしたインテグレーションに関する面倒を減少させることができる。顧客にとっては、その方がよほど利便性が高いという考え方もある。
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