SaaSと書いて、「サース」あるいはアルファベットをそのまま「エス・エー・エー・エス」と読む。あの恐ろしいSARS(重症急性呼吸器症候群:サーズ)と同じ発音はしないようだ。SaaSとは、「Software as a Service」の略称のこと。最近にわかに注目を浴びつつある、ASP(Application Service Provider)から発展したIT業界の最新キーワードの1つだ。
はじまりはASPと呼ばれていた
ASPという言葉が世の中に登場したのは、インターネットバブルまっただ中の1990年の終わり頃のことだ。当時のASPサービスは、データセンターのサーバー上に置かれたソフトウェアにインターネット経由で接続し、アプリケーションを利用した分だけ料金を支払うというもの。ネット関連の新たなビジネスということもあってか、マスコミもこぞってASPを取り上げ、あっという間に多くのベンダーが市場に参入してきた。
ところが市場参入が相次いだにもかかわらず、ユーザーへの普及は今ひとつ。その理由として、当時は高速なインターネット回線がかなり高価であったこと、提供されていたアプリケーションの性能や機能が満足するレベルに至っていなかったことが挙げられる。そのため、「これからはASPの時代」とあおり立てたマスコミの思惑通りに事は運ばず、新規参入した多くのASPベンダーは早々に市場からの撤退を余儀なくされた。
<当時ASPで提供されていたのは、グループウェアあるいはショッピングサイトなどで、いわゆる業務系アプリケーションは対象となっていなかった。基本的にカスタマイズはできず、ベンダーが提供するままの画一的な使い勝手で利用するしかなかったのもデメリットの1つだ。/p>
ASPからオンデマンドへ
オンデマンドという言葉は、現在のIT業界では珍しいものではない。もともとは、「オンデマンド印刷」などのように注文や要求に応じて、随時必要なサービスを提供することを意味する。これが、コンピュータシステムに対して用いられると、ITサービスをユーザーの要望に応じて柔軟に提供することになる。アプリケーションをユーザーの要望に応じて提供するサービス、つまり、画一的なものしか提供できなかった旧来のASP型のサービスから、ユーザーの要望に応じてカスタマイズなど柔軟に対応できるように進化させたものを「オンデマンドサービス」あるいは「オンデマンドアプリケーション」と呼ぶようになった。
このオンデマンドサービスで成功しているのが、Salesforce.comだ。Salesforceが対象としたのは、CRMの業務アプリケーション。顧客データベースを利用した営業支援システムやヘルプデスク業務支援などのアプリケーションを、月額数千円という低価格で提供しユーザーを増やしてきた。2000年以降のADSLや光回線の普及で高速回線のコストが下がったことや、低価格で信頼性の高いハードウェアの登場もオンデマンドサービスの普及を後押しすることになる。
オンデマンドサービスの最大のメリットは、構築、導入に時間がほとんどかからないことだ。導入を決めて契約さえ済んでしまえば、明日からでもアプリケーションを利用できる。また、カスタマイズが可能なためユーザーの業務のやり方に合わせた画面や処理が実装できること、初期コストを抑え、部門などの小規模からトライアル的に導入して順次採用を拡大できることなどがメリットとして挙げられる。
さらに、システムを所有しないメリットも大きい。昨今の情報システム部における多くの仕事は、システムを安全かつ信頼性の高い状態に維持し続けること、つまりシステム運用管理に多大なコストと時間を費やしているのだ。24時間365日の稼動が当たり前のシステムでは、頻繁に出されるセキュリティパッチを当てたり、パッチ適用後のシステムをチェックしたりといったことが頻繁に発生し、人的ミスが許されず時間的な制約のなか苦労も多い。オンデマンドサービスならば、情報システム部はこれらの運用管理の悩みから解放されることになる。
とはいえ、ITにおける問題解決に対しオンデマンドサービスが現状でのベストな解決策かといえばそうともいえない。現状では初期のASPで提供されていたグループウェアやECサイト、Salesforce.comが提供しているCRMなどがオンデマンドサービスとして提供されている。そのほかの基幹系業務である会計システムやサプライチェーンシステムなどは、オンデマンドサービスとして十分に準備されてはいない。
結局のところ、CRMなどの一部のITシステムだけをオンデマンド化し、残りは従来どうりユーザーの手元でシステムを構築、導入し運用管理することになる。さらにカスタマイズが可能とはいえ、あらゆるユーザーの要求に応えられるわけもなく、なんらか業務のやり方をオンデマンドサービスのアプリケーションに合わせる必要も出てくる。
関連情報
-
ネットスイートが日本法人を設立--日本代表に元マイクロソフトの東貴彦氏が就任
カリフォルニア州サンマテオに本拠地を置くオンデマンドビジネス管理ソフトウェア企業であるNetSuiteは、100%出資の日本法人「ネットスイート株式会社」を設立することを発表した。 - 総合ソリューションをASPで提供するネットスイート:ソフトウェアのオンデマンド化を推進するASP(2)
- ビジネスウェブの中核企業を目指すセールスフォース:ソフトウェアのオンデマンド化を推進するASP(1)
- アプリケーションのカスタマイズを可能に--セールスフォースの新しい賭け
- Microsoft
- Oracle
- SAP
- Salesforce.com
「通信」 の新着情報
-
複数のデータセンターを分散させたままでBCP/DRを展開:山武
業務に必要なシステムをデータセンターで稼働させている企業は多いと思うが、災害復旧(DR)を中心とした事業継続計画(BCP)... - 日立ソフト、「SecureOnline 出前クラウドサービス」発表--導入負担を軽減
- APC、アセスメントサービス拡充--赤外線カメラで高温部分を把握
- シマンテック、中小企業に関するIT調査を発表:57%がIT費用増加と回答
- 日本IBM、企業内クラウドの展開を管理するアプライアンス「CloudBurst」を発売
- 通信 一覧へ »
「今さら人に聞けないITトピック」 のバックナンバー
-
マイクロソフトのクラウドサービス「Windows Azure」とは?
「Windows Azure」は、マイクロソフトが準備しているクラウドコンピューティングのサービスだ。この記事ではその概要や位置づけ、現在の状況などを説明する。 -
今流行のネットブックってどんなもの?
-
最近よく聞く「Windows 7」って?
-
クラウドコンピューティング--希望の光か、それともただのマーケティング用語なのか
-
日本発のQRコードがヨーロッパに本格進出?
- 今さら人に聞けないITトピック 一覧へ »
ZDNet Japan Essential Topic
-
仮想化、復習しませんか?
この特集で仮想化のパターンがわかります -
ストレージ、イチから勉強しませんか?
ネットワークに仮想化、ストレージの流行も教えます
企画特集
-
そのストレージで仮想化に対応できますか?
メリット盛りだくさんのサンのオープンストレージ製品 -
マネジメントの「コラム」と「コネタ」
今日のキーパーソンは誰? -
◆エン・ジャパン厳選求人☆毎週更新◆
不況下でも急成長の秘訣とは?注目企業の取組みも公開! -
仮想環境を実現するソリューション特集
仮想化導入時、こんなところ気にしてますか? -
セキュリティ&ユーザ事例【SIer Club】
最新のセキュリティ情報と提案事例が満載 -
【徹底対談】運用管理ツールの賢い使い方
市場背景〜仮想化管理までアナリストが解説! -
ESBでIT投資の無駄を劇的に解消する
IBM IMPACT 2009を徹底レポート! -
ストレージメディア特設サイト開設
仮想化環境において最適なソリューションを! -
パンデミック対策特集
2009年のパンデミック発生から再考する事業継続計画 -
中小企業のセキュリティリスクとは?
導入する側・される側 得するセキュリティ製品 -
ロリポップ!がリニューアル
【第1回】創業者の家入一真氏が語る誕生秘話!! -
今注目の「サジェスト検索」−デモ掲載中
システムのユーザビリティに革命を起こす技術とは -
SOA、BPM、SaaS −今、企業に必要なこと
ビジネス・アプリケーションの今を網羅する特設サイト -
集積度も性能も、業界最高水準のブレードPC
サーバの実装技術を、シン・クライアントへ応用 -
インターネット上の悪意を未然に防ぐには?
ブラウザに備わったセキュリティ機能を徹底解説 -
■ストレージ容量50%削減保証■
ネットアップによる削減保証キャンペーン実施中 -
サービス・ドリヴン・データセンター
コスト効果の高いデータセンター構築には? -
サーバー監視・運用のコストを削減するには
エージェントレス方式を用いたパトロールクラリスで -
エンタープライズにおけるSUSEの強み
次世代データセンターの基盤は11だ。
ZDNet Japanからのお知らせ
- ご回答にはCNET_IDご登録が必要です。
-
1.並列性のための包括的ソリューション
Intel Parallel Studioが、いかにVisual Studioを拡張し、並列プログラ... -
2.Advisor概要
Intel Parallel Advisorについての2分間の概要紹介で、プログラマが自分...
新着企業動向
-
「クールアース・デーの取り組み」について
箕面市役所 -
国際財務報告基準の衝撃と会計システム構築のポイントがわかるセミナー
NECソフト -
【EMC Mail News】本格的なクラウド時代に向けた「VMware vSphere 4」と連携するEMC製品群
EMCジャパン -
SecureCube / PC Check
NRIセキュアテクノロジーズ - 企業動向一覧へ»
幸い今回は弱毒性で大事には至らなかったが、まだ油断はできない。企業活動を停止すると、大きな経済的損害や社会的信用の低下を招いてしまう。
サーバやOS、アプリケーションなどの世界ではオープンソーススタンダードが市場を牽引する現在、ストレージの世界でもオープン化の流れが始まっている。 
