賢明な企業は、職場の内外で従業員の高い満足度を維持することがビジネスの成功につながることを知っている。現在では多くの企業が、柔軟性のある勤務スケジュールや長めの家族休暇など、ファミリーフレンドリーなプログラムの策定や仕事と生活の調和を実現する社風の醸成に取り組んでいる。以下に紹介する4つの企業は、従業員のニーズを優先することがいかに利益につながるかを証明している。事実、これらの4社は「Working Mother」誌の2006年「働く母親のための職場ベスト100社」に選出されている。
Ernst & Young
税務、会計、財務サービス
ニューヨーク州ニューヨーク
休暇のポリシー:実子または養子のプライマリーケアギバー(男女問わず)は6週間の全額給付の有給休暇、セカンダリーケアギバーは2週間の全額給付の有給休暇を取得できる。雇用期間が3カ月以上の女性が出産する場合は、さらに6週間の短期の有給労働不能休暇を取得することができる。
フレックスタイム制度:Ernst & Youngの2万7000人にのぼる米国内の従業員の約10%がフレックスタイムを利用している。新たに出産した母親は、1週間の勤務日数の圧縮または再分配、1日の勤務時間の短縮、またはこれらのオプションを組み合わせることによって段階的に職場に復帰することができる。
会社の方針:Ernst & Youngでは、新しく親となった従業員に対して、子育てを支援する寛大な休暇のポリシー(有給のプログラムに加えて無給休暇を取得できる)から親業サポートグループに至るまで、さまざまな支援サービスを用意している。さらに、週20時間以上勤務するあらゆる従業員に対してすべての特典を与えており、雑務代行サービスやEYアシスト(情報資源と照会プログラム)といった従業員のための資源を制度化している。
経営面の利点:「前回調査したときには、84%の女性が職場に復帰しており、これは非常に高い比率だ」とErnst & Youngのフレックス戦略リーダーのMaryella Gockel氏は述べ、「一部の人は復帰時に仕事の量を減らすだけだが、縮小したスケジュールのままで勤務を続ける選択をすることもできる。当社ではフレキシブルワークアレンジメントという制度を中心に非常に積極的に取り組んでいる」と語る。Ernst & Youngでは自由な勤務形態を取る従業員も不利益を被らないようにしている。「1993年以来、縮小スケジュールで勤務した経験のある女性で上級職に昇進した人は優に100人を超える」とGockel氏は指摘する。「だから女性たちは、縮小スケジュールで勤務したからといって、それだけで出世が妨げられることはないとわかっている」(Gockel氏)
Microsoft
コンピュータのソフトウェアとサービスの開発
ワシントン州レドモンド
休暇のポリシー:新しく子供が誕生した、養子を取った、または里子を受け入れた場合、子供の世話をするために最長12週間の育児休暇を取得できる。また、休暇を取得するタイミングは子供が誕生してから、または里子、養子を迎え入れてから12カ月まで認められる。誕生から6カ月までに休暇を取得した場合は、その休暇の最初の4週間については基本給の100%が支給される。出産した母親は基本給の100%を受け取りながら最長8週間まで休職できる。
フレックスタイム制度:新しく子供が生まれた親を含め、すべての従業員が自宅または遠隔地からテレワークで勤務し、自分の時間を生み出すための柔軟性のあるスケジュールを作成する機会が与えられている。ジョブシェアリングも選択できる。
会社の方針:「ファミリーフレンドリープログラムのことは常に優先して考えている」とMicrosoftの上級福利厚生マネージャーのTeresa Melcher氏は語る。新しく親になった従業員のための支援オプションは広範囲にわたる。たとえば、子供が誕生したばかりの親と出産を予定している親のための月例学習会。テーマは出産前ケアから新生児の最初の1年間に至るまでさまざまである。また、保育料金の割引と子育て支援プログラム、授乳とミルク保存のためにプライバシーが確保できる「新米の母親のための部屋」、休暇取得などの過程で疑問のある従業員やマネージャーを支援する専門の離職プログラムマネージャーもある。さらに、子育て、子供の発育、特別なケアが必要な子供といったテーマについて従業員に個人的なコンサルタントを紹介するサービスもある。
「Microsoftはマネージャーに対しても、育児休暇の問題を効果的に管理し、従業員を円滑に復職させるための充実したFAQのリソースを提供している」(Melcher氏)
経営面の利点:「従業員は当社の第1の資産であり、したがって従業員から評価される福利厚生を提供することは会社にとってきわめて重要だ。これらのプログラムは従業員の1人1人に個別に対応しており、Microsoftが貴重な従業員を定着させるとともに新しい人材を引きつける助けになっている」(同上)