今回は災害対策と事業継続管理との違いを確認し、災害対策特有の課題は何か、その背景と解決策について考えてみたい。
災害対策の定義
まずは、一般的な災害対策の定義を確認してみよう。連載の第1回では、災害対策(DR:Disaster Recovery)の定義を「情報システムのリカバリー施策。その復旧手順や施策に関わる機器も含めた設備の構築」とした。
災害対策の歴史は事業継続管理よりも古く、DRII(Disaster Recovery Institute International)Professional Practicesによると、1960年代に米国で復旧計画(Recovery Plan)と言われる計画書だけを用意したのが始まりとされている。その後、1970年代には情報システムの資源復旧にも投資が行われ、現在の災害対策のイメージに近いものが実施されるようになってきた。
日本も含め、米国以外のほとんどの国で本格的な災害対策活動が行われるようになったのは1980年代と言われている。その時点では、米国でも事業継続管理の考え方が定着しておらず、復旧対策は情報資産が中心であった。その具体的な内容は、データセンターのバックアップセンター準備や、ネットワークの二重化、ハードウェア機器の冗長化、データの遠隔地保管などの情報システム対策で、今でもこれらは災害対策として実施されている。その後、事業中心の考え方が発展し、現在に至っている。
事業継続管理との違い
では、災害対策と事業継続管理との違いをどのようにとらえればよいのだろうか。単純に考えると、災害対策は情報システムの復旧を中心とした施策で、事業継続管理は重要業務を継続させるための施策となるため、復旧や継続の視点を情報システムと業務のどちらにおいて実施するかが主な違いとなる。
仮に、ある重要な業務において情報システムの役割が主要なプロセスを代替する、もしくは情報システムが業務プロセスそのものを担っているなど、情報システムへの依存度が高い業務の災害対策は、意味合いとして事業継続管理と同じと言える。
厳密に言うと、上記のケースでも事業継続管理と言うためにはPDCA(Plan、Do、Check、Act)の改善サイクルを意識したり、企業のインシデントに対する方針や体制を記した文書を整備したりする必要がある。現在の災害対策では、ほとんどの場合これらの点は考慮されているため、上記のように視点をどちらに置くかで災害対策と事業継続管理を分けて問題ない。
ただし、違いがあると言っても情報システムそのものの位置付けが業務をサポートすることに変わりはない。災害対策の最終的なゴールは事業継続であり、災害対策が事業継続管理の一部であることを忘れてはならない。
災害対策の課題
復旧のサービスレベルを考える場合、その指標を「目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)」と「目標復旧時点(RPO:Recovery Point Objective)」とすることは有名な話だが、情報システムの課題、つまり災害対策特有の課題として考えるべきポイントは、目標復旧時点になる。
業務の復旧にも目標復旧時点の考え方がないわけではないが、こちらは業務が中断した時点からいかに早く業務再開できるかが基本となる。そのため事業継続計画の内容も、目標復旧時間内に、漏れがなく正確に復旧するための手順が中心となっている。