米インテルが発表した2009年第4四半期決算(10〜12月)は、驚くべき結果となった。
売上高は前年同期比28%増の106億ドル、営業利益は62%増の25億ドル、純利益は875%増の23億ドルと、大幅な増収増益となった。通期では、売上高は7%減の351億ドル、営業利益は36%減の57億ドル、純利益は17%減の44億ドルと減収減益だが、業界全体の先行指標としても位置づけられるインテルの第4四半期における驚異的な業績回復は、今後、ITベンダーやシステムインテグレーターなどの業績回復に向けて、大きな期待感を抱かせるものとなった。
第4四半期におけるPCクライアント事業部の売上高は対前期比で10%増、データセンター事業部は対前期比21%増など。注目されるAtomプロセッサと関連チップセットの売り上げは対前期比で6%増となった。
インテル日本法人の取締役副社長である宗像義恵氏は、「2010年はコンシューマーPC領域において、新たなプロセッサ、OSへの積極的なアップグレードへの動きが見られ、堅調に推移するだろう。また、企業向けPCおよびサーバ需要についても、IT投資の回復により、ハードの買い換え需要が見込まれる」と強気の見通しを示す。
特に「2009年に投入したXeonプロセッサ5500番台に対する需要は好調。4年前のシングルプロセッサに比べて、90%も年間消費電力を削減することができ、8カ月で投資コストが回収できる。電力効率の向上は、運用コストの削減だけでなく、グリーンITの進展にも貢献できる。これがますます加速することになるだろう」と、サーバ市場における成長を強調する。
インテルがこれだけの強気の見通しを打ち出すのも、第4四半期の好業績を裏付けにしたものと見ればうなずける。
もうひとつ、インテルがこの業績に自信を見せている理由がある。それは、粗利益率が対前年同期比で12ポイント上昇し、なんと65%にも達していることだ。
これは辣腕経営者といわれたAndy Grove氏がCEOの時代にも成しえなかった、インテル始まって以来の記録的な粗利益率となっているのだ。
その背景には、マイクロアーキテクチャであるNehalemプラットフォーム製品のボリュームが拡大したことが大きい。特に、先に触れたように、Xeonプロセッサ5500番台の好調ぶりは特筆できるほか、高性能プロセッサへの需要が高まり、出荷比率が高性能CPUへシフト。Atomプロセッサへの需要が高まるなかでも、前年同期に比べて、マイクロプロセッサ全体のASP(平均販売価格)が上昇したこともある。
また、32nmプロセスへの移行が開始され、設備投資も一時的に縮小傾向にあったこと、そして、新たな製造プロセスによって、製造コストを削減した形での生産が可能になったことなどもあげられる。
CEOであるPaul Otellini氏も、今回の決算については、「業界をリードする製造技術と、革新的な製品への投資が反映されたもの。戦略投資により、事業効率が飛躍的に改善し、経済環境が厳しいなかでも既存事業の成長と新規市場ての有望な事業機会を創出した」とコメントしており、業績改善に向けた効率化の成果であるとともに、継続的な投資の成果であることを強調した。
2010年第1四半期も、粗利益率の見通しは、61%±2ポイントになるとしており、依然として高い水準で推移すると見ている。また、2010年通期でも、61%±3ポイントと、年間を通じてこの勢いが継続すると見ている。
インテルの業績回復と強気の見通しは、IT業界全体にも波及するとの期待感は大きい。各社が、これに追随できるかどうかは、2009年までの準備がどこまでできていたかの通信簿ともいえる。インテルを指標として、業界各社のこれからの動きを捉えてみると、その差が明確になってくるだろう。