2008年8月、筆者はあるブログ記事を執筆した。その記事は当時のクラウドコンピューティングとインターネットのコミュニティーで大きな議論を巻き起こした。筆者はその記事で、クラウドコンピューティングサービスの消費者とベンダーにとってのある種の簡単な「権利章典」だと考えていたものについて解説した(編集部注:米国の権利章典とは、米国憲法のうち個人の権利保障を定めた10の条項のことを言う)。
その後、同じ2008年8月に、さまざまなソースからのフィードバックをまとめた更新記事を掲載し、クラウドプロバイダーおよびクラウド消費者の両者と政府の関係を対象とした条項をいくつか付け加えた。この記事にはテクノロジコミュニティーと法曹界の両方の人々が注目し、それぞれの意見を述べ、最初の記事以上に大きな議論を呼んだ。
筆者は近ごろ、あるフィードバックを受けることが増えている。これらの記事で概要を提示した権利を新しいものにし、クラウドコンピューティング市場の現状と、クラウドサービスの利用にテクノロジ、文化、法律が与える影響についてこれまでに分かったことを反映するべきだという意見だ。
この権利章典は、クラウドベンダー(場合によってはそのサプライヤーも)と顧客(場合によってはその顧客も)の関係について予測されるものをまとめた概略であり、両者の根本的な利益の保護を目的としている。また、規制や法律は両者の関係に大きな影響を持つことがあるため、政府の役割と責任に対する期待も反映されている。
今回の2010年版では、Gordon Haff氏とBenjamin Tseng氏から、特許権の乱用と、通信プロトコルに関する侵害と障害について、それぞれ助言をいただいた。両氏には深く感謝したい。
実際のところ、2008年版の権利章典には当時の状況と展望しか反映されていない。そして今日の市場では、重要な主義に反していると言える事例が既に何件か存在する。しかし、新しい情報を追記してこの記事を再掲載することで、クラウドコンピューティング経済に関わるさまざまな当事者に代わって、何が妥当な期待で、何がそうでないのかについての議論を今後も推し進めていきたいと思う。
クラウドコンピューティングの権利章典2010年版
技術の歴史の中では、わずかながら存在する極めて重要な革新が、技術に関する経済が機能する仕組みを永遠に変えてしまうことがある。このような革新は、顧客とベンダーが互いに抱く期待と、両者が商業活動を営む上で依存するアーキテクチャも永遠に変えてしまう。われわれは今、その革新の1つが切り開く新時代を迎えようとしている。それはネットワークベースのサービス、プラットフォーム、アプリケーションで構成される革新であり、現時点では「クラウドコンピューティング」として知られるものだ。当事者たるわれわれは、ここに以下の(多くの場合)不可譲の権利を明言する。
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