2004年7月に「Adobe LiveCycle」製品ファミリーを発表したAdobe Systems。LiveCycleは、PDFをベースにドキュメント管理やビジネスプロセスの自動化を実現するソフトウェア製品群だ。PDFドキュメントの生成はもちろん、ドキュメントにセキュリティを与えることで情報漏えいや改ざん防止対策に利用でき、校正・レビューなどにおけるコラボレーションや、紙の処理が必要なワークフローでも二次元バーコードを使って電子化するといったプロセス管理も可能となる。
その後2005年12月に同社はMacromediaの買収も発表したが、この買収はLiveCycleの今後のロードマップにどのような影響を与えるのか。LiveCycleの現在とその方向性について、Adobe Systems インテリジェントドキュメントビジネス部 グループプロダクトマーケティングマネージャーのBrian Wick氏と、アドビ システムズ 公共・法人市場部 部長の小島英揮氏に聞いた。
--まずLiveCycleが具体的にどのような場面で使われているのか教えてください。
小島氏: LiveCycleは、PDFをインターフェースとして情報を提示したり取り込んだりするためのインフラを提供します。PDFは印刷フォーマットという印象が強いのですが、ウェブ上での申込用紙としても使われます。
例えば、みずほ銀行の新規申し込みサイトをお見せしましょう。このPDFのサイトには、PC入力用という項目があり、これを選べばPDFに直接入力できるようになります。申し込み画面の選択肢もルールベースで表示方法が決まっているため、ある項目で1を選んだ人はさらにA〜Cを選択するといった見せ方もできます。
また、入力画面は途中で保存も可能です。入力フォームの保存はHTMLが苦手な部分ですが、PDF形式で保存し、その後追記や修正も可能です。みずほ銀行のフォームは捺印が必要なため、直接サイトからフォームの送信はできませんが、サイトから直接送信するような設定も可能ですし、コメントをつけたすことや電子署名をつけることも可能です。
こうした作業をするために、特別なソフトを使う必要はありません。無償のPDF読み込みソフト「Adobe Reader」だけで保存や修正ができるのです。通常こうした作業には「Adobe Acrobat」製品が必要となりますが、Readerだけでこの作業が可能となるのは、Live Cycleを使ってPDFに権限を与えることができるためです。Acrobatがなくてはできない機能をReaderのユーザーにも与え、サーバで管理するのがLiveCycleだといえます。
Wick氏: LiveCycleではプロセスの自動化が可能です。社内の業務プロセスを自動化することはそう難しくありませんが、パートナーや顧客とのプロセスの自動化は簡単ではありません。取引先のIT環境までコントロールすることは困難ですからね。しかし、Adobe Readerはすでに多くのPC環境に入っていますから、ReaderとPDFフォーマットを使ってプロセスの自動化が可能になるのです。金融業界の中でも特に保険会社や住宅ローン会社などが、顧客と関わるプロセスの中でLiveCycleを利用するケースが多いですね。